こんにちは、シルバーとっぷの雲居 愛です。
「海浜ニュータウンの4階に住んでいる父が最近足腰が弱くなって、外出がほとんどできなくなってしまいました。何か良い方法はありませんか?」——美浜区への訪問中、そんなご相談を受けることが少なくありません。
美浜区の旧公団・公社住宅はエレベーターなしの4〜5階建てが多く、介護が必要になってから外出手段の確保に苦労されるご家族が増えています。車椅子があれば解決……というわけではなく、まず「どうやって1階まで降りるか」というところから考えなければなりません。
この記事では、エレベーターなし集合住宅特有の課題を踏まえた現実的な対応策と、車椅子・歩行器それぞれの活用方法を詳しくご説明します。
エレベーターなし住宅の現実——外出できなくなるまでの経緯
美浜区の海浜ニュータウンで建てられた1970〜80年代の公団・公社住宅の多くは、4〜5階建てエレベーター未設置です。当時は子育て世代が主な居住者として想定されており、エレベーターがなくても「若い体なら階段を使えば問題ない」という時代でした。
しかし今、その住宅の最上階に高齢者の方が住み続けているケースが多くあります。外出が難しくなる経緯はだいたい以下のようなパターンです。
- 膝や腰の痛みが出始め、階段の上り下りが「しんどくなってきた」と感じ始める
- 外出するのが億劫になり、買い物や通院以外は外に出なくなる
- 体力と筋力がさらに低下し、独力での階段昇降が困難になる
- 「外出したくても出られない」状態になる
この悪循環を早めに断ち切ることが重要です。「まだなんとか歩けるから大丈夫」という段階のうちに対策を講じることで、状況の悪化を大幅に遅らせることができます。
歩行器・歩行補助杖で階段を昇降できるかの判断基準
歩行器や歩行補助杖を使えば階段の昇降ができるかどうかは、以下の点で判断します。
階段昇降が「できる可能性がある」条件
- 階段の両側または片側に手すりがある
- 要介護1〜2程度で、まだ自力歩行がある程度可能
- 膝・股関節に過度な痛みがない
- バランス感覚が比較的保たれている
- 認知機能が保たれており、安全な動作手順を理解できる
階段昇降が「難しい」サイン
- 平地でもふらつきが頻繁にある
- 要介護3以上で歩行能力が著しく低下している
- 過去に転倒・骨折の経験がある
- 認知症があり、状況判断が難しい
- 階段が急勾配・手すりが片側のみ
実際の判断は、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)の専門的な評価を受けることが理想です。訪問リハビリを活用するか、担当のケアマネージャーさんにご相談ください。
外出支援の現実的な組み立て方
4〜5階に住んでいて外出が困難になってきた場合、いくつかの方法を組み合わせて外出を支援することができます。
方法1:屋内用歩行器+外出時の折りたたみ車椅子
最もよく活用されるのが、室内用と外出用の使い分けです。
- 部屋の中:コンパクトな歩行器または歩行補助杖で移動
- 外出時:1階のエントランス付近に折りたたみの車椅子を置いておき、家族またはヘルパーさんと一緒に外出するときに使う
自力で階段を降りられる場合は、歩行補助杖を持って慎重に階段を下り、1階で車椅子に乗り換えるというパターンです。わたしの担当エリアでも、このような使い方をされている方が実際にいらっしゃいます。
方法2:ヘルパーさんによる外出同行
訪問介護(ホームヘルプサービス)の「身体介護」として、ヘルパーさんが階段の昇降を手伝ってくれます。介護保険の認定を受けていれば、この費用も1〜3割の自己負担で利用できます。
「週1回のデイサービスの送迎日だけ外に出る」というパターンも有効です。デイサービスの送迎スタッフが4〜5階まで迎えに来てくれるかどうかは事業所によって異なりますので、事前にご確認ください。
方法3:移送サービスの活用
美浜区社会福祉協議会では、外出が困難な高齢者・障害者向けの移送サービスを提供しています。通院などで外出が必要な場合に活用できる地域資源です。千葉市社会福祉協議会や美浜区社会福祉協議会にお問い合わせください。
(参考:千葉市社会福祉協議会 https://www.chiba-shakyo.jp/)
階段昇降機という選択肢
「階段昇降機」とは、階段のレール上を電動で椅子が昇降する装置です。設置費用は機種や階数にもよりますが、目安として数十万円程度です。
注意点として、階段昇降機は介護保険のレンタル対象品目ではありません。設置にあたっては以下の点を確認する必要があります。
- 集合住宅の場合、共用部分への設置は管理組合の許可が必要
- 階段の幅や勾配によっては設置できない場合がある
- 専門業者による現地調査が必要
「階段昇降機を検討したい」という場合は、お住まいの管理組合または管理会社にまず確認されることをお勧めします。費用については福祉用具の補助とは別の制度が使える場合もありますので、千葉市や千葉県の相談窓口でご確認ください。
転倒しやすい「踊り場・最初の段」への手すり設置
エレベーターなし集合住宅での転倒事故が多いのが、階段の踊り場と最初の1段目です。「よし降りるぞ」と気を引き締めて足を出した最初の1歩や、踊り場での方向転換の際にバランスを崩しやすいです。
こうした場所に置き型の手すりを設置することで、転倒リスクを大きく低減できます。置き型手すりは介護保険のレンタル対象(要支援1以上)で、工事不要で設置できます。ただし、集合住宅の共用廊下・階段への置き型手すりの設置については、管理組合への確認が必要になる場合があります。
また、住居内の玄関から外廊下への段差(敷居部分)にも小型の置き型手すりやスロープを設置するケースがあります。わたしも訪問時には「この段差、つまずきやすそうだな」と思ったら必ずご家族に確認してご提案するようにしています。
「外出できなくなる前」の早期介入が重要な理由
「まだ自分で動けるうちは福祉用具は要らない」とお考えになる方は多いです。しかし、「そろそろ怪しいかな」という段階での早期介入が、その後の生活の質を大きく左右します。
外出機会が減ると、筋力・バランス能力がさらに低下し、認知機能にも影響が出ることが知られています。また、外出しなくなることで社会とのつながりが失われ、孤立感・うつ状態につながるリスクも高まります。
「転んでから手すりをつける」ではなく「転ぶ前に手すりをつける」——この発想の転換が、在宅生活を長続きさせる上で非常に重要です。わたしたち福祉用具専門相談員は、現状を確認した上で「今必要なもの」「将来必要になりそうなもの」をあわせてご提案することができます。
よくあるご質問
まとめ
- エレベーターなし4〜5階住宅では「室内用歩行器」と「外出時の車椅子」を使い分けることが有効
- 一人での階段昇降が難しい場合は、ヘルパー同行外出・デイサービス送迎を活用する
- 転倒しやすい踊り場・最初の1段目には置き型手すりを設置する
- 「外出できなくなる前」の早期介入が生活の質の維持に直結する
- 階段昇降機は介護保険外だが、必要に応じて専門業者に相談する
海浜ニュータウンのエレベーターなし住宅という難しい環境でも、正しい福祉用具の使い方と地域資源の組み合わせで、多くの方が生き生きとした在宅生活を続けていらっしゃいます。「うちの場合はどうすれば?」という具体的なご相談は、いつでもシルバーとっぷにお気軽にお電話ください。
参考にした情報
- 厚生労働省「福祉用具貸与・特定福祉用具販売」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/yougu/index.html(2026年6月時点)
- 千葉市社会福祉協議会 https://www.chiba-shakyo.jp/(2026年6月時点)
- 千葉市「介護保険サービス情報」 https://www.city.chiba.jp/koufuku/kaigo/hokenjigyou/index.html(2026年6月時点)
雲居 愛 / 株式会社シルバーとっぷ 福祉用具専門相談員
免責事項:本記事の情報は2026年時点のものです。最新の制度内容は厚生労働省または各自治体にご確認ください。
