こんにちは、シルバーとっぷの雲居です。千葉市を中心に、ご家族のお宅へ福祉用具をお届けしている福祉用具専門相談員です。
先日、介護の専門紙シルバー産業新聞で「段差解消スロープの貸与(レンタル)件数が、この12年でおよそ2.8倍に増えた」という記事を目にしました。数字だけ聞くとピンとこないかもしれませんが、これは「家の中や玄関のちょっとした段差で困っているご家庭が、それだけ増えている」ということでもあります。今日はこのニュースを入口に、在宅介護での段差対策について、現場目線でお話しさせてください。
ニュースのポイント:スロープのレンタルが12年で2.8倍に
記事によると、スロープは介護保険でレンタルできる福祉用具のひとつで、車いすや歩行器で移動するときに段差をなくすための道具です。2026年1月の時点で、レンタル件数は目安として約47万9千件、福祉用具レンタル全体のだいたい4%を占めているそうです。12年前と比べると、およそ2.8倍にまで伸びているとのことでした。
いっぽうで、直近の3年ほどは少し件数が減っている面もあるようです。これは2024年度から始まった「貸与(レンタル)と販売を選べる仕組み」の影響で、玄関などに固定して使うタイプのスロープは購入を選ぶ方が増えているためではないか、と記事では触れられていました。制度の細かいところは、このあともう少しお話ししますね。(※制度の詳しい解釈は、担当のケアマネジャーさんやお住まいの自治体窓口にご確認ください。)
なぜスロープを使うご家庭が増えているのでしょう
わたしが担当させていただいたお客様の中には、「ほんの数センチの段差なのに、そこでつまずいて転んでしまった」という方が少なくありません。若いころは気にもとめなかった段差が、足腰が弱ってくると、とても大きな『壁』になってしまうのです。
先日うかがったお宅でも、退院されたお父様が玄関の上がり框(あがりかまち)でうまく足が上がらず、ご家族が毎日両脇を抱えて持ち上げていらっしゃいました。腰を痛めそうな介助を続けておられて、「これはご家族もご本人もおつらいですね」と、その場でスロープと手すりの組み合わせをご提案しました。段差が解消されると、車いすでもすっと出入りできるようになり、ご本人の表情がぱっと明るくなったのを今でも覚えています。
転倒は、ときに骨折や入院のきっかけになり、そこから在宅介護が一気に大変になってしまうこともあります。もちろんお体のことは主治医の先生にご相談いただくのが一番ですが、「転ぶ前の段差対策」に目が向くご家庭が、じわじわと広がっているのだと感じています。
千葉のお宅でよくある「段差の場所」
千葉市内や近隣エリアのお宅をまわっていると、段差でお困りになる場所には、だいたい共通したパターンがあります。
①玄関の上がり框・アプローチ
戸建てでは玄関の上がり框、マンションや団地では玄関ポーチの一段が大きな段差になりがちです。稲毛区や若葉区のように坂の多いエリアでは、玄関までのアプローチに数段の階段があるお宅も少なくありません。
②掃き出し窓・お庭への出入り口
洗濯物を干すための掃き出し窓の段差も、意外と見落とされがちです。ここに小さなスロープを置くだけで、車いすやシルバーカーでお庭に出られるようになり、外の空気を吸う時間が持てるようになります。
③室内の敷居・和室との境目
廊下と和室のあいだの敷居など、数センチの段差でも歩行器のキャスターが引っかかってしまうことがあります。こうした室内用には、軽くて置くだけのタイプが向いていることが多いです。
スロープは「借りる」と「買う」、どちらがよいの?
先ほどのニュースにもあった『レンタルと販売の選択制』ですが、現場でもよくご質問をいただくテーマです。ざっくりとした目安ですが、置いたり動かしたりして使う持ち運びタイプは、お体の状態に合わせて交換しやすいレンタルが向いていることが多いです。いっぽう、玄関などに固定してずっと使うタイプは、購入を選ばれるケースもあります。
ただ、これはお一人おひとりの状況やお体の変化によって答えが変わってきます。わたしも選択制が始まったばかりのころは「どちらをおすすめすればいいのだろう」と最初は少し混乱しました。ですので、実際にどちらがよいかは、担当のケアマネジャーさんや福祉用具専門相談員と一緒に、これからの暮らし方に合わせて考えていくのが安心だと思います。
スロープを選ぶときに見ておきたいポイント
選び方のコツを、いくつかご紹介します。数字はあくまで目安として受け取ってくださいね。
- 勾配(傾き):ゆるやかなほど楽に上れますが、そのぶん長さが必要になります。車いすを介助する場合は、目安としてなるべくゆるやかな傾きが安心です。
- 長さ:段差の高さのだいたい2〜3倍以上の長さがあると、傾きがゆるやかになりやすいと言われています。
- 幅と耐荷重:車いすのタイヤ幅や、ご本人と介助者を合わせた体重に合っているかを確認します。
- 重さ・収納性:ご家族が毎日出し入れするなら、軽くて折りたためるタイプだと負担が少なくなります。
ニュースの記事でも、メーカーが『狭い間口への対応』『軽量化』『メンテナンスのしやすさ』に力を入れていると紹介されていました。福祉用具は年々使いやすく進化していますので、以前あきらめた段差も、今なら解決できるかもしれません。
まずは段差の「困りごと」を教えてください
スロープは、ただ置けばよいというものではなく、段差の高さやスペース、ご本人の動き、介助するご家族の負担まで見て選ぶことが大切です。実際の設置では、置き方ひとつで安全性が変わることもあります。ご自宅で試してから決めていただけるよう、わたしたちもお手伝いしています。
「玄関の段差が心配」「車いすでお庭に出してあげたい」——そんな小さなお困りごとで大丈夫です。わたしも訪問先で、よく同じご相談をいただきます。一緒に考えていきましょう。ご家族の暮らしが少しでも穏やかになるよう、わたしたちは千葉県で35年お手伝いしてきました。ご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。
参考:シルバー産業新聞
