こんにちは、シルバーとっぷの雲居です。千葉市を中心に、ご家族のお宅へ福祉用具のご相談にうかがっています。
先日、業界のニュースで「乗せる道具から生活支援へ」という言葉を見かけました。ケアニュース by シルバー産業新聞(2026年8月3日)によると、東北福祉大学の関川伸哉教授とジェー・シー・アイ(宮城県富谷市)が、高齢者用の車椅子「PS・1SMILE」を共同開発したそうです。座面の高さや奥行きを細かく調整でき、その方の体に合わせることで、姿勢を保つこと・足でこぐこと・立ち上がることを支えるのがねらいだと紹介されていました。今は施設で使われることが多いものの、「在宅でも効果が大いに期待できる」とのことです。
この記事を読んで、わたしは「そうそう、これなんです」と、思わずうなずいてしまいました。車椅子って、つい『乗せて運ぶための道具』だと思われがちなのですが、実は選び方ひとつで、ご本人の“できること”が変わってくる道具なんです。今日はこのニュースを入り口に、ご家族が車椅子を選ぶときに知っておいてほしいことを、わたしなりにお話しさせてください。
車椅子は「乗せる道具」から「暮らしを支える道具」へ
親御さんの介護が始まって、はじめて車椅子を用意することになったご家族の多くは、「とりあえず座れて、押して動かせればいい」と考えていらっしゃいます。もちろん、移動できることはとても大切です。でも現場でご一緒していると、車椅子には“もうひとつの役割”があると感じます。それは、ご本人に残っている力をできるだけ引き出すという役割です。
今回のニュースにあった「足こぎ」や「立ち上がり」を支える、という考え方が、まさにそこにつながります。両足でしっかり床を踏めると、車椅子に座ったまま自分で少し進めたり、立ち上がりの動作がぐっと楽になったりします。反対に、車椅子が体に合っていないと、ずり落ちそうな姿勢になってしまい、「動きたくても動けない」状態になりがちなんです。
ケアマネージャーさんからもよく相談を受けるのですが、「最近、車椅子から立ち上がりにくくなった」というお悩みの背景に、車椅子そのものが合っていないケースは少なくありません。道具を『合わせる』だけで、暮らしの動きが変わることがあるんですね。
ご家族が見落としがちな、車椅子選びの3つのポイント
難しい話に聞こえるかもしれませんが、大丈夫です。わたしも最初は「車椅子なんてどれも同じでは?」と思っていました。ポイントを3つに絞ってお伝えします。
1. 座面の高さ ― 足の裏がしっかり床につくか
意外に見落とされがちなのが、座ったときに足の裏が床にちゃんとつくかどうかです。かかとまで床につくと、足でこいで進んだり、立ち上がったりしやすくなります。逆に高すぎると足が浮いて、力が入りません。今回のニュースの車椅子が「座面の高さを調整できる」ことをうたっているのも、この一点がとても大事だからだと思います。
2. 座面の奥行き ― 深すぎず、浅すぎず
座る部分の奥行きが体に合っていないと、姿勢が崩れてしまいます。深すぎると背中が丸まって前にずり落ち、浅すぎると太ももが支えられず不安定になります。膝の裏に指が2〜3本入るくらいが目安として言われますが、これはあくまで一般的な目安ですので、実際にはその方の体格に合わせて確かめることが大切です。
3. 使う場所 ― 自走式か、介助式か
ご本人が自分でこいで動くなら車輪の大きい「自走式」、ご家族が押すのが中心なら軽くて扱いやすい「介助式」というように、使う場面で向き・不向きがあります。玄関まわりの段差や、お住まいの通路の幅などによっても、選ぶ一台は変わってきます。
現場でよくいただくご質問なのですが
わたしが担当させていただいたお客様の中には、退院を前に「もう自分で歩けないから、車椅子に乗せておけばいい」と、あきらめに近いお気持ちでご相談くださるご家族もいらっしゃいます。でも実際にお宅へうかがって、足の裏がしっかり床につく高さに合わせてみると、ご本人が「あれ、自分で少し動ける」と表情が明るくなる場面に、何度も立ち会ってきました。
もちろん、体の状態は人それぞれで、立ち上がりや足こぎがどこまでできるかは、主治医やリハビリの専門職の見立てによります。ここは医療の判断になりますので、必ず主治医やケアマネージャーさんにご相談ください。ただ、道具を体に合わせるという一手間が、ご本人の「まだできる」という気持ちを支えることがある――これは現場で本当によく感じることです。
在宅で車椅子を活かすために、ご家族ができること
「合わせる車椅子」と聞くと、特別で高価なものが必要に思えるかもしれません。でも、いちばん大切なのは製品の名前ではなく、その方の体と暮らしに合っているかどうかです。そのために、ご家族に知っておいてほしいことをまとめます。
- まずは試してから決める:介護保険を使った福祉用具のレンタルなら、実際に使ってみて合わなければ交換もできます。カタログだけで決めず、お宅の環境で試すのがおすすめです。
- ケアマネージャーと福祉用具専門相談員に相談する:わたしたち福祉用具専門相談員は、体格や住まいに合わせた選定と調整のお手伝いをします。ご相談は無料です。
- 「動かす」だけでなく「動ける」視点をもつ:立ち上がりや足こぎを少しでも活かせる高さ・奥行きに合わせると、介護する側の負担も軽くなることがあります。
先輩から教わったのですが、同じ要介護度の方でも、合う一台はまったく違います。だからこそ、実際にお会いして、座っていただいて、微調整していく時間がとても大切なんですね。
千葉市で車椅子のご相談は、お近くの窓口へ
千葉市にお住まいで「そろそろ車椅子を考えたい」という方は、まずお住まいの地域包括支援センターや担当のケアマネージャーさんにお声がけください。要介護認定を受けている方であれば、介護保険を使ったレンタルの対象になる場合があります。制度の細かな条件は、お住まいの区役所の窓口や自治体の案内でご確認いただくと安心です。
今回のニュースのように、福祉用具は年々「ただ運ぶ道具」から「暮らしと自立を支える道具」へと進化しています。むずかしい制度やたくさんの選択肢に、わたしも最初は混乱しました。でも、一つひとつ一緒に確かめていけば大丈夫です。
ご家族の暮らしが少しでも穏やかになるよう、わたしたちは千葉県で35年お手伝いしてきました。ご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。一緒に、その方に合う一台を考えていきましょう。
雲居 愛(くもい あい)/ 株式会社シルバーとっぷ 在宅営業部 福祉用具専門相談員。千葉県生まれ。千葉県内の大学で社会福祉を学び、2024年シルバーとっぷ入社。現在は千葉市を中心にご家族のもとへ訪問し、福祉用具の選定やご相談を担当。趣味は読書と犬の散歩。
