こんにちは、シルバーとっぷの雲居です。
最近、「令和8年に介護給付適正化の手引きが改訂されましたよ」という話が、ケアマネさんとの打ち合わせの中でも話題になることが増えてきました。
わたし自身、最初にこの手引きの存在を先輩から教えてもらったとき、「保険者向けの文書だから、貸与事業所には直接関係ないのでは?」と思ったひとりです。でも読んでみると、福祉用具貸与事業所として「何を確認されるのか」「どんな書類を整えておくべきか」が具体的に書かれており、現場で働くわたしたちにも大いに参考になる内容だと感じました。
この記事では、手引きの第V章「福祉用具貸与調査」を中心に、貸与事業所として押さえておきたいポイントを整理してお伝えします。断定的なことは言えませんが、現場の参考になれば嬉しいです。
本記事は「介護給付適正化における住宅改修等の点検および福祉用具購入・貸与調査の取組促進に向けた手引き第二版(令和8年3月)」(令和7年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金事業)の内容をもとにまとめています。手引きは主に保険者(市区町村)向けに作成されたものです。解釈は自治体によって異なる場合がありますので、詳細は各自治体・国保連にご確認ください。
目次
- この手引きはどんな文書か
- 福祉用具貸与の調査はいつ行われるか
- どんなケースが調査対象になりやすいか
- 書類調査で確認されるポイント
- 支給後の調査について
- 疑義が生じる具体例
- 令和6年4月からの「貸与と販売の選択制」との関係
- 現場で感じること
- よくあるご質問(FAQ)
- まとめ
この手引きはどんな文書か
「介護給付適正化における住宅改修等の点検および福祉用具購入・貸与調査の取組促進に向けた手引き第二版」は、令和8年3月に公表されました。令和5年度の研究事業で作成された初版をベースに、令和7年度の調査研究事業において追記・修正が加えられたものとされています。
この手引きは、介護給付の適正化事業として、保険者(市区町村)や国保連(国民健康保険団体連合会)が実施する住宅改修の点検・福祉用具購入調査・福祉用具貸与調査について、組織としての体制や点検のポイント、取組事例などを整理したものです。
手引き冒頭では、活用が想定される読み手として以下が挙げられています。
- 保険者(市区町村):適正化取組の実践に活用
- 地域ケア会議:事前打ち合わせや個別事例検討の参考資料として
- 介護支援専門員・サービス提供事業者等:モニタリング結果を踏まえた振り返りや、新規利用者へのサービス提供時の確認に
- 都道府県:保険者へのヒアリングや支援に
つまり、福祉用具貸与事業所も活用が想定されている文書です。「調査される側」としてではなく、よりよいサービス提供のための参考資料として読むことが、手引きの趣旨に沿っています。
なお、介護給付の適正化とは「介護給付費(費用)の抑制を推進するものではなく、利用者にとって適切な給付を確保するための事業」と手引きに明記されています。この点は重要なポイントです。
福祉用具貸与の調査はいつ行われるか
手引きでは、福祉用具貸与の調査時期として以下の2つが示されています。
| 調査タイミング | 内容の概要 |
|---|---|
| ①事前相談 | 貸与開始前に保険者が相談を受け、利用の適切性を確認する(必須ではなく、保険者によって対応が異なる) |
| ②支給後の調査 | 貸与中・貸与後に、利用状況や書類の整備状況などを確認する |
事前相談は保険者によって実施状況が異なります。令和5年度調査結果では、全体の約92.8%の保険者が自庁内職員のみで対応しているとのことでした。
一方、支給後の調査は、多くの保険者が実施または検討している取り組みです。日常的にサービスを提供している貸与事業所にとっては、こちらの調査のほうが関係することが多いと思われます。
どんなケースが調査対象になりやすいか
手引きには、保険者が調査対象を抽出する際の参考例が具体的に示されています。これは保険者向けの記述ですが、貸与事業所としては「どんなケースが注目されやすいか」を知る手がかりになります。
事前相談での抽出条件(参考例)
- 軽度者(要支援1・2、要介護1)への例外給付
- 同一種目の複数貸与
- 貸与品目が多い場合
- 重度者の寝たきり状態にある利用者への貸与
- 電動カート(シニアカー)・電動車椅子の貸与
- 認知症老人徘徊感知機器・自動排泄処理装置・移動用リフトの申請
- 貸与価格が全国平均より著しく高額な場合
- 入院中の貸与の場合
- 手すりやスロープなど、住宅改修による取付が可能な箇所への貸与の場合
支給後の調査対象の抽出条件(参考例)
支給後の調査についても、概ね同様の条件が挙げられています。加えて、以下のようなケースも対象として例示されています。
- 要支援・要介護認定の更新時期で、直近1年間に給付実績があった場合
- 貸与1年後に現況確認を行うケース
要支援1・2・要介護1の方への特殊寝台・車椅子等の貸与は「例外給付」にあたり、主治医の意見や担当ケアマネとの協議記録など、必要書類が揃っているかどうかが確認されやすいとされています。書類の保管を丁寧に行うことが大切です。
書類調査で確認されるポイント
手引きには、調査における書類確認のポイントが具体的に示されています。大きく2つの視点から整理されています。
ポイント①:利用者の状態把握と目標設定
「どのような課題を解決するために福祉用具が必要なのか」が明確になっているかどうかが確認されます。
| 確認ポイント(手引きより) | 判断の観点 |
|---|---|
| ADL・IADL・QOLにおける問題点や課題がある | 利用者に福祉用具が必要な理由がある |
| ケアプラン・福祉用具サービス計画の利用目標が利用者の課題解決と合致している | 選定された福祉用具に妥当性がある |
ポイント②:福祉用具の必要性・妥当性の確認
| 確認ポイント(手引きより) | 判断の観点 |
|---|---|
| 利用者の身体機能・生活状況・住環境と選定した福祉用具の機能が適している | 自立支援に適した用具が選ばれている |
| 選定した福祉用具を貸与することが適切である | 貸与の妥当性がある |
| 現時点での利用者の状態像と福祉用具の貸与が適している(種目・商品の変更・終了の可能性も含む) | 購入や住宅改修と比較して貸与が適している |
| 費用(貸与価格)が妥当であると判断できる | 金額面でも適切である |
これらの確認は、主に福祉用具サービス計画書とケアプランを照らし合わせる形で行われることが多いとされています。2つの書類が整合しているかどうかが、一つの大きな確認軸になります。
支給後の調査について
貸与が始まった後も、保険者による確認が行われることがあります。手引きでは、支給後の調査のポイントとして以下が示されています。
- ケアプランや福祉用具サービス計画の利用目標を達成でき、利用者が日常生活で福祉用具を活用できているか
- 選定した福祉用具が利用者の自立支援に適しているか
- 現時点での利用者の状態像と選定した福祉用具を踏まえ、継続的な貸与が適しているか
- 費用(貸与価格)が適切であると判断できるか
調査の方法としては、利用者宅への訪問調査やアンケート調査、またはケアプラン点検と併せた確認などが例示されています。ICT(テレビ電話・WEB会議システムなど)の活用も一案とされています。
また、支給後の調査結果を介護支援専門員や福祉用具貸与事業所にフィードバックすることで、不必要な支給の是正にもつなげていくという観点も手引きに示されています。
疑義が生じる具体例
手引きには、保険者が調査の中で「疑義が生じる具体例」として以下のようなケースが列挙されています。これらは、書類や説明に不備があった場合に確認が入りやすいとされている場面の参考例です。
- 利用者の介護認定と、相談のあった福祉用具の内容が明らかに適切ではない場合
- ケアプランに位置付けられていない福祉用具を貸与している場合
- 同一種目を複数貸与しているが、その理由が不明確な場合
- 軽度者(要支援1・2・要介護1)への例外給付に必要な書類が揃っていない場合
- 選定した福祉用具について、ケアプランや福祉用具サービス計画の目標との整合性が確認できない場合
- 手すりやスロープなど、住宅改修でも対応可能な箇所に福祉用具を貸与しており、その理由が説明できない場合
これらはあくまで手引きに示された「例」であり、すべてが問題になるわけではありません。重要なのは、「なぜその福祉用具が必要なのか」「なぜ貸与という方法が適切なのか」を記録として残しておくことだと理解しています。
令和6年4月からの「貸与と販売の選択制」との関係
手引きでは、令和6年4月から導入された一部の福祉用具に係る「貸与と販売の選択制」についても、適正化の観点から言及されています。
選択制の対象となった種目(スロープ・歩行器・歩行補助つえの一部)については、利用者への説明と意向確認が求められています。手引きでは、購入を選んだ後に身体状況が変化した場合は、同じ種目の他の福祉用具を貸与することも可能であるとされています。
(出典:厚生労働省「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」老高発0135第6号 令和6年3月15日 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html)
選択制に関して調査が入る場面としては、購入を選んだ後に修理不能となりあらたな用具が必要になった場合や、購入後に同種目の別の用具を貸与しているケースなどで、対応の適切性が確認されることがあるとされています。
現場で感じること
先日、ベテランの先輩とこの手引きの話をする機会がありました。「こういう文書が出るたびに確認が増えるように感じるかもしれないけど、書類をきちんと残すことって、結局はお客様へのサービスの質にもつながっていると思うよ」と話してくれました。
わたしも日々の業務の中で、「なぜこの用具を選んだのか」という理由をサービス計画書にしっかり書くことを意識するようになりました。調査のためというよりも、担当が変わっても同じ水準のサービスを続けるために。そういう気持ちで記録を残すことが、長い目で見てお客様への誠実なサービスになるのだと感じています。
ケアマネさんとの連絡も、電話やメモだけで終わらせず、できるだけ記録として残すよう意識しています。「記録がある」ということは、「誠実にサービスを提供してきた」という証明にもなると思っています。
よくあるご質問(FAQ)
参考にした情報
- 「介護給付適正化における住宅改修等の点検および福祉用具購入・貸与調査の取組促進に向けた手引き第二版」令和8年3月 令和7年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)住宅改修の給付実態等の把握と指導監督のあり方に関する調査研究事業
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html(2026年5月時点)
- 厚生労働省「ケアプラン点検について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/hoken/jissi_00005.html(2026年5月時点)
- 公益財団法人テクノエイド協会 福祉用具情報システム https://www.techno-aids.or.jp/ServiceWelfareGoodsList.php(2026年5月時点)
まとめ
この記事のポイント
- 手引き第二版(令和8年3月)は、保険者が住宅改修・福祉用具の適正化調査を行う際の実務指針。貸与事業所も活用が想定されている
- 調査対象になりやすいケースとして、軽度者への例外給付・複数貸与・貸与品目が多いケース・高額な貸与価格・特定の品目(電動カート・徘徊感知機器等)が挙げられている
- 書類調査では福祉用具サービス計画書とケアプランの整合性が特に確認されやすい
- 支給後の調査では、利用目標の達成状況・継続貸与の適切性・価格の妥当性などが確認されることがある
- 日常業務の中で「なぜこの用具が必要か」の記録を丁寧に残すことが、最も有効な対応につながる
手引きを読んでみて感じるのは、給付適正化は「削減」ではなく「利用者にとって適切なサービスが届いているかの確認」という視点が一貫していることです。わたしたち福祉用具専門相談員が日々丁寧に行っている仕事——利用者さんの状態をよく把握して、必要な用具を選んで、記録を残す——は、その確認に十分応えられるものだと思っています。
不明な点がある場合は、担当のケアマネさんや各自治体・保険者の窓口にご相談ください。わたしたちシルバーとっぷも、千葉県内でのサポートをしています。お気軽にご連絡ください。
千葉県で福祉用具レンタル・介護用品をお探しなら
創業35年の株式会社シルバーとっぷへ。お気軽にご相談ください。
TEL: 043-257-0133
本記事の情報は2026年5月時点のものです。制度の内容は法改正・通知等により変更される場合があります。最新の制度内容は厚生労働省または各自治体にご確認ください。個別のケースへの対応については、担当ケアマネージャーや保険者にご相談ください。
著者プロフィール
雲居 愛(くもい あい)/ 株式会社シルバーとっぷ 在宅営業部 福祉用具専門相談員。千葉県生まれ。千葉県内の大学で社会福祉を学び、2024年シルバーとっぷ入社。現在は千葉市を中心にご家族のもとへ訪問し、福祉用具の選定やご相談を担当。趣味は読書と犬の散歩。
