こんにちは、シルバーとっぷの雲居です。連日の暑さが続く千葉市ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。わたしは今日も稲毛区や近隣のご家庭を訪問しながら、ご家族のお話をうかがっています。
先日、介護の業界紙で気になるニュースを見かけました。ケアニュース(シルバー産業新聞)によると、東北福祉大学の関川伸哉教授と福祉用具メーカーが、高齢者用の新しい車いすを共同開発したそうです。座面の高さや奥行きを細かく調整して、利用者お一人おひとりの身体に合わせられるのが特長で、足の裏がしっかり床に着く姿勢をつくることで、足こぎや立ち上がりの動作を助けるねらいがあると紹介されていました。記事の中では「施設では予算などの制約もあり、車いすが必ずしも利用者の身体に合っていない」という実態にも触れられていて、わたしは「これはご家庭でも同じことがあるかもしれない」と、はっとさせられました。
今日はこのニュースをきっかけに、車いすの「座り方」――専門的にはシーティングと呼ばれる考え方について、ご家族の目線でやさしくお話しできればと思います。
車いすは「乗せる道具」から「暮らしを支える道具」へ
車いすと聞くと、多くの方が「移動するための道具」というイメージをお持ちだと思います。もちろんそれも大切な役割です。でも、実は「どう座っているか」で一日の過ごし方が大きく変わることが多いのです。今回のニュースのタイトルにあった「乗せる道具」から「生活支援へ」という言葉は、まさにその発想の転換を表しているのだと感じました。
正しく座れていると、次のような場面がぐっとラクになることがあります。
- ずり落ちてこないので、長く座っていても疲れにくい
- テーブルに近づけて、ご自分で食事がしやすい
- 足の裏が床に着くことで、立ち上がりや乗り移り(移乗)のときに踏ん張りがきく
- 背中がすっと伸びて、呼吸や飲み込みがしやすくなる場合がある
正直にお伝えすると、わたしも入社したてのころは「車いすはサイズさえ合えばどれも同じ」と思っていました。ですが、ベテランの先輩から教わったのですが、座面の高さや奥行きが数センチ違うだけで、座り心地も立ち上がりやすさも変わってくるそうなのです。現場を重ねるほど、その意味を実感しています。
そもそも「シーティング」ってなんですか?
「シーティング」という言葉は聞き慣れないかもしれませんね。わたしも最初は少し身構えてしまいました。かんたんに言うと、その方の身体に合わせて、無理のない姿勢でしっかり座れるように整えることを指します。
具体的には、こんな部分を見ていきます。
- 座面の高さ…足の裏が床や足置き(フットサポート)に着くかどうか
- 座面の奥行き…深く腰かけたときに、ひざの裏に当たりすぎていないか
- 背もたれ…背中や腰を支えられているか
- クッション…おしりへの負担を分散できているか
難しそうに聞こえるかもしれませんが、大丈夫です。わたしも最初は「どこを見ればいいの?」と混乱しました。ポイントは「合っているかどうか」を一つずつ確認していくこと。そして、迷ったときはお一人で抱えず、専門職に声をかけていただくことなのです。
「なんだか合っていないかも」ご家族が気づけるサイン
ご家族が毎日そばで見ているからこそ気づける“サイン”があります。以下は、あくまで目安としてご覧ください。
- 座っているうちに、だんだん前や横にずり落ちてくる
- 身体が斜めに傾いていく
- 足が床や足置きに届かず、ぶらぶらしている
- 浅く腰かけて、背中が丸まっている
- 長く座っていると「痛い」「疲れた」とおっしゃる、足がむくむ
- ご自分で立ち上がろうとしても、うまく踏ん張れない
こうしたサインが見られるときは、車いすがその方の身体に合っていない可能性があります。ただし、むくみや皮膚の赤み(床ずれの心配)など、体調にかかわることは自己判断が難しい部分です。気になる症状があるときは、主治医やケアマネージャーさんにご相談いただくのが安心です。
訪問先での、あるエピソード
わたしが担当させていただいたお客様の中には、退院されてからご自宅で車いすを使い始めた方がいらっしゃいました。ご家族から「座るとすぐにずり落ちてしまって、そのたびに座り直しの介助が大変で…」とご相談をいただいたのです。
お宅にうかがって拝見すると、足が足置きに届かずにぶらぶらしていて、浅く腰かけた状態になっていました。そこでケアマネージャーさんとも連携しながら、座面の高さや奥行き、クッションを見直し、足の裏がしっかり着く姿勢に整えていきました。すると座り直しの回数がぐっと減り、ご本人の表情もやわらかくなって、「テーブルでお茶が飲みやすくなった」と笑ってくださったのです。ご家族からも「同じ車いすなのに、こんなに違うんですね」と驚かれました。こうした瞬間に立ち会えるのが、この仕事のうれしいところです。
ご自宅の車いす、こんな見直しができます
まずは、無理にご自分で調整しないこと
「高さが合っていないなら、家族で直してあげよう」と思われるかもしれません。お気持ちはとてもよく分かります。ですが、片麻痺や痛み、身体の状態によって最適な座り方は一人ひとり違います。自己判断で高さを変えると、かえって立ち上がりにくくなったり、転倒につながったりする場合もあるのです。まずは福祉用具専門相談員やリハビリの専門職、主治医にご相談いただくのが安全です。
レンタルなら、合わないときに交換やお試しもできます
介護保険を使った福祉用具のレンタルでは、身体に合わないと感じたときに、別のタイプへ交換する手続きができる場合があります。クッションを足す、座面の奥行きを調整するといった工夫でしっくりくることも少なくありません。「せっかく借りたのに言い出しにくい」と遠慮される方もいらっしゃいますが、体に合った一台で毎日を過ごしていただくことがいちばん大切ですので、どうか気軽におっしゃってください。
千葉市内でどこに相談したらよいか分からないというときは、お住まいの区の地域包括支援センターや、担当のケアマネージャーさんが窓口になってくれます。わたしたち福祉用具専門相談員も、ケアマネージャーさんと連携しながら、実際に座り心地を確かめるお手伝いをしています。
車いすは、ただ「乗る」ためだけの道具ではありません。正しく座れることで、食事や立ち上がり、そしてご本人らしい時間そのものを支えてくれます。今回のニュースは、そのことを改めて教えてくれたように思います。ご家族の暮らしが少しでも穏やかになるよう、わたしたちは千葉県で35年お手伝いしてきました。「うちの車いす、合っているのかな?」と気になったら、いつでもご相談ください。一緒に考えていきましょう。
