銀行が福祉機関に連絡できる新方針|親の認知機能低下と見守りの備え

こんにちは、シルバーとっぷの雲居です。千葉市を中心に、ご家族のお宅へ訪問して福祉用具のご相談をお受けしています。まだまだ暑い日が続いていますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

先日、気になるニュースを目にしました。2026年8月17日の日本経済新聞によると、厚生労働省と金融庁が、認知機能が低下した高齢者について、銀行など金融機関が本人の同意がなくても福祉機関へ連絡できるようにする方針だ、というものです。特殊詐欺の被害を防いだり、成年後見制度などの支援につなげたりする狙いがあるそうです。記事によると、金融庁は年内をめどに個人情報保護のガイドラインを見直し、地域包括支援センターなどへ相談できることを明確にする方向で、実施は2026年中を予定しているとされています。

「うちの親、大丈夫かな」と、ふと不安になったご家族もいらっしゃるのではないでしょうか。今日はこのニュースを入口に、親の見守りについて在宅介護のご家族が今できることを、現場目線で一緒に考えてみたいと思います。

ニュースの内容を、やさしく整理します

少しかみくだいてみますね。これまで金融機関は、お客様の情報を外部に伝えるときには原則として本人の同意が必要でした。でも、認知機能が低下してきた方の中には、「同意」そのものの判断がむずかしくなっている場合もあります。その間に、お金をだまし取られてしまう――そんな心配があったわけです。

今回報じられた方針は、こうした場合に、金融機関が地域包括支援センターなどの福祉機関へ連絡しやすくする、というもの。窓口で「様子がいつもと違うな」と気づいたときに、地域の見守りの網につなげやすくなる、というイメージだと受け止めています。

わたしも最初にこの記事を読んだときは、制度の話は少しむずかしく感じました。ただ、ここで大切なのは細かい法律の中身を覚えることではなく、「地域や社会全体で、高齢の方を見守っていこうという流れが進んでいる」という空気感だと思っています。なお、成年後見制度など法律にかかわる詳しい仕組みは、お住まいの自治体の窓口や、弁護士・司法書士などの専門家にご確認くださいね。

なぜ、在宅介護のご家族に関係が深いのでしょう

親の介護が始まる40〜60代の方から、現場でよくいただくご相談があります。「離れて暮らす親のお金の管理が心配」「認知症とまではいかないけれど、少し物忘れが増えてきた気がする」というお声です。

ケアマネージャーさんからもよく相談を受けるのですが、実はお金のトラブルは、体の変化よりも先にサインが出ることがあると言われています。同じ物を何度も買ってしまう、通帳やお財布の置き場所がわからなくなる、知らない請求書が増える――こうした変化は、ご家族が「あれ?」と気づく最初のきっかけになることが多いのです。

今回のニュースは、そうした気づきを「ご家族だけで抱えなくてもいい」方向に社会が動いている、ということでもあります。とはいえ、いちばん身近で見守れるのはやっぱりご家族です。制度が整うのを待つだけでなく、今のうちからできる備えを一緒に見ていきましょう。

まず頼りにしたいのが、地域包括支援センター

千葉市には、6つの区それぞれに地域包括支援センターがあります(あんしんケアセンターと呼ばれています)。ここは高齢の方の介護・福祉・見守りの、いわば「よろず相談窓口」。今回のニュースで金融機関からの連絡先として挙がっているのも、この地域包括支援センターのような機関です。

「まだ介護が必要というほどではないから」とためらう必要はありません。お金の心配、物忘れの心配、一人暮らしの親御さんの見守り――そうした介護保険の手続き前の段階のご相談にも乗ってくれます。わたしが担当させていただいたお客様の中には、まず地域包括支援センターに相談したことで、見守りサービスや必要なつながりが一気に整った、という方もいらっしゃいました。

ご家族が遠方にお住まいの場合でも、親御さんが住んでいる地域の担当センターに連絡すれば大丈夫です。まずは電話一本、というところから始めてみてくださいね。

福祉用具専門相談員の視点から、暮らしの見守りを

わたしの本業は福祉用具のご相談ですが、「見守り」という点では、暮らしの道具でお手伝いできることもあります。ベテランの先輩によると、体の安全とお金の安全は、実は地続きなのだそうです。転倒でケガをして急に生活が変わると、判断力にも影響が出やすいからですね。

見守りにつながる福祉用具の例

  • 徘徊感知機器(離床センサー・見守りセンサー):認知症のある方が夜間にベッドから離れたときなどに、ご家族へ知らせてくれるタイプがあります。要介護度などの条件によっては介護保険でレンタルできる場合があります。
  • 手すりや段差解消スロープ:転倒を防ぐことは、暮らしのリズムを保ち、変化に早く気づくことにもつながります。工事不要で置くだけのタイプもあります。
  • 使いやすい介護ベッド:起き上がりや立ち上がりが楽になると、生活の自立が保たれ、ご家族も日々の様子を確認しやすくなります。

どの用具が合うかは、お一人おひとりの状態やお住まいによって変わります。「見守りたいけれど、何から」と迷われたら、目安のご案内だけでもできますので、お気軽に声をかけてください。福祉用具が体に合うか不安なときは、お試しいただける場合もあります。

今日から、ご家族ができる小さな備え

制度改正はこれからですが、待っている間にもできることがあります。だいたいの目安として、次のようなことから始めてみてはいかがでしょうか。

  • 親御さんの通帳やお金の管理方法を、家族で一度話し合っておく
  • 不審な電話や訪問があったときの合言葉や相談先を決めておく
  • お住まいの区の地域包括支援センター(あんしんケアセンター)の連絡先を控えておく
  • 成年後見制度などの備えは、早めに専門家に相談しておく
  • 離れて暮らす場合は、見守り機器や定期的な連絡の仕組みをつくっておく

先日、あるお客様のお宅にうかがったときのことです。手すりのご相談で訪問したのですが、お話をうかがう中で「最近、親が同じ物を何度も買ってしまって」というお悩みが自然とこぼれてきました。わたしは福祉用具の専門なのでお金の判断まではできませんが、「地域包括支援センターに相談してみませんか」とお伝えしたところ、後日「早めに動けて安心した」とご連絡をいただきました。ご家族が最初に相談する相手は、必ずしも専門機関でなくてもいいんです。訪問した相談員でも、ケアマネさんでも、話しやすいところから、で大丈夫だと思っています。

ひとりで抱え込まず、地域で見守る時代へ

今回のニュースは、「高齢の方を、家族だけでなく社会全体で見守っていこう」という大きな流れの一つだと感じています。制度の細かいところはこれから固まっていきますので、詳しくは自治体の窓口や専門家にご確認いただければと思います。

ご家族の暮らしが少しでも穏やかになるよう、わたしたちは千葉県で35年お手伝いしてきました。見守りや福祉用具のことで気になることがあれば、いつでもご相談ください。わたしも訪問先で、同じようなご相談をよくいただきます。一緒に考えていきましょう。


雲居 愛(くもい あい)/ 株式会社シルバーとっぷ 在宅営業部 福祉用具専門相談員。千葉県生まれ。千葉県内の大学で社会福祉を学び、2024年シルバーとっぷ入社。現在は千葉市を中心にご家族のもとへ訪問し、福祉用具の選定やご相談を担当。趣味は読書と犬の散歩。

参考:日本経済新聞

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