高齢の親の「聞こえにくさ」に気づいたら|ヒアリングフレイルと在宅介護の備え

こんにちは、シルバーとっぷの雲居です。厳しい暑さが続きますが、みなさんのお宅では変わりなくお過ごしでしょうか。

先日、ある自治体の広報紙が「ヒアリングフレイルを防ぎましょう」という健康コラムを載せ、高齢者の補聴器購入費の補助や『きこえからはじまる認知症予防』をテーマにしたイベントを告知した、というニュースを目にしました(株式会社聴脳科学総合研究所、2026年8月1日)。聞き慣れない「ヒアリングフレイル」という言葉ですが、じつはご家族の介護のはじまりと、とても深く関わっています。今日はこのニュースを入口に、ご家族の目線で噛み砕いてお話しさせてください。

「ヒアリングフレイル」ってなんですか?

ヒアリングフレイルとは、加齢などで耳の聞こえが少しずつ衰えていく状態のことを指すそうです。ニュースでは「聞こえにくさが続くと、人と話すのがつらくなり、外へ出る機会が少なくなってしまう状態」と紹介されていました。わたしも最初にこの言葉を聞いたときは「フレイル(虚弱)に耳のことも入るんだ」と少し驚きました。

ベテランの先輩によると、聞こえにくさは「歳のせいだから」と見過ごされやすいのだそうです。でも、聞こえづらいと会話がおっくうになり、外出や人づきあいが減り、気持ちも沈みがちになる――こうした流れが、心身の元気を少しずつ奪ってしまうことがあると言われています。

難聴と認知症の関係も指摘されています

近年は、難聴と認知症のリスクの関連を指摘する報告もあるようです。中年期以降の聞こえの衰えが、そのままにしておくと認知機能の低下につながりやすい、という見方があるとのこと。ただ、これはあくまで一般的に言われている話であって、個々の方の診断はまったく別のお話です。「聞こえが悪いと必ず認知症になる」というわけではありません。気になる症状があるときは、自己判断せず耳鼻科や主治医にご相談くださいね。

現場でよく出会う「認知症かと思ったら…」というご相談

わたしが担当させていただいたお客様のご家族の中には、「最近、話しかけても返事がないんです。認知症が始まったのでしょうか」とご不安を打ち明けてくださる方が少なくありません。福祉用具のご相談でうかがったお宅で、ご家族とお話ししているうちに「もしかして、聞こえていないのかもしれませんね」という話になることも、現場ではよくあります。

もちろんわたしは医療の判断はできませんので、そういうときは「一度、耳鼻科の先生や主治医に聞こえのことも診ていただけると安心かもしれません」とお伝えするようにしています。認知症を心配していたご家族が、じつは聞こえの問題だったと分かってホッとされる場面もあります。心配しすぎるより、まずは正しく調べてもらうことが、ご本人にもご家族にも安心につながるように感じます。

ご家族が家でできる、聞こえへの寄り添い方

聞こえにくさは、周りのちょっとした工夫でぐっと楽になることがあります。現場でご家族にお伝えしている、家庭でできる声かけのコツをいくつかご紹介します。

  • 正面に回り、顔を見て、口の動きが見えるように話す
  • 大声より「ゆっくり・はっきり・低めの声」を意識する
  • テレビや換気扇など、まわりの音を一度小さくしてから話す
  • 後ろや別の部屋から話しかけず、そばに近づいてから声をかける
  • 伝わらないときは、言い換える・紙に書く・スマホの文字を見せる

「聞こえていないだけなのに、何度も聞き返されてつい大きな声になってしまう」――これはご家族もご本人もつらいですよね。わたしも訪問先で、よく同じご相談をいただきます。責め合いにならないよう、伝え方を少し変えるだけで、おうちの空気がやわらぐことがあります。

聞こえの低下は「転倒」にもつながることがあります

先輩から教わったのですが、聞こえにくさは会話だけでなく、体のバランスや周囲への気づきにも影響することがあるそうです。後ろから来る人や物音に気づきにくく、ヒヤッとする場面が増える方もいらっしゃいます。ご自宅の中でふらつきや転びそうな場面が増えてきたら、聞こえとあわせて、足元の環境も見直すタイミングかもしれません。

福祉用具専門相談員の立場では、この「転ばない環境づくり」がまさにお手伝いできるところです。介護保険を使って、廊下やトイレ・玄関の手すり(工事のいらないタイプもあります)や、段差を解消するスロープなどをレンタルできる場合があります。どの用具が合うかは要介護度やお体の状態によって変わりますので、ケアマネージャーさんやわたしたち相談員に、お気軽に声をかけていただければと思います。

補聴器の助成は「お住まいの市区町村」で確認を

今回のニュースでは、ある自治体が高齢者の補聴器購入費の一部を補助する制度を紹介していました。じつは、こうした補聴器の助成は全国一律ではなく、お住まいの市区町村ごとに、有無も内容も対象条件も異なります。金額や年齢の条件なども自治体によってさまざまです。

千葉市や千葉県内にお住まいで「うちの地域では補助があるのかな?」と気になった方は、お近くの区役所の窓口や地域包括支援センターにお問い合わせいただくのが確実です。制度のこまかい要件や申請の仕方は変わることもありますので、詳しくは自治体の窓口や専門家にご確認くださいね。わたしも制度のこまかい部分は、いつも「最新の情報は窓口で確認しましょう」とお伝えしています。

ちなみに、補聴器そのものは介護保険の福祉用具レンタルの対象品目ではありません。「介護保険で借りられるもの」と「医療・自治体の制度で支援されるもの」は分かれていますので、そこは少しややこしいところです。わたしも入社したての頃は混乱しました。どの窓口に相談すればよいか分からないときは、まず地域包括支援センターに聞いてみると、道案内をしてもらえることが多いですよ。

「聞こえ」は、暮らしと心の入口です

聞こえにくさは、目に見えにくく、ご本人も「聞こえないとは言い出しにくい」ものです。だからこそ、いちばん近くにいるご家族の「あれ?」という気づきが、とても大切だと感じます。難聴なのか、認知症なのか、その両方なのか――それを見極めるのは専門家のお仕事ですが、「気づいて、相談につなげる」ところは、ご家族にしかできない大事な一歩です。

聞こえの相談は耳鼻科や主治医へ、制度の相談は自治体の窓口や地域包括支援センターへ、そして「家の中を安全に、暮らしやすく」のご相談は、どうぞわたしたち福祉用具専門相談員にお任せください。ご家族の暮らしが少しでも穏やかになるよう、わたしたちは千葉県で35年お手伝いしてきました。ご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。

参考:株式会社聴脳科学総合研究所

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