「抱えない介護」でご家族の腰を守る|在宅の移乗を助ける福祉用具

こんにちは、シルバーとっぷの雲居です。先日、業界のニュースで、10月に東京ビッグサイトで開かれる「第53回 国際福祉機器展(H.C.R.2026)」の会場で、『抱えない介護が、人材と経営を救う』というテーマのセミナーが開かれる、という記事を目にしました。天井を走るリフトなどを使って、介助する人が利用者さんを『抱え上げない』ようにしよう、という取り組みのお話です。もともとは介護施設や北欧の実践の文脈で語られることが多いのですが、わたしは読みながら「これはむしろ、在宅で介護をされているご家族にこそ知ってほしいな」と感じました。今日はその『抱えない介護』を、千葉市でご家庭をまわっているわたしの目線で、やさしくお伝えできればと思います。

「抱えない介護」ってなんですか?

『抱えない介護』は、専門的には「ノーリフティングケア」と呼ばれることが多い考え方です。ざっくり言うと、人の力だけで無理に持ち上げたり抱え上げたりせず、福祉用具の力を借りて移動や乗り移り(移乗といいます)を助けましょう、という発想です。わたしも最初にこの言葉を聞いたときは「抱えないでどうやって動かすんだろう?」と混乱しました。でも先輩から教わったのですが、道具をうまく使うと、驚くほど少ない力で、しかもご本人にもやさしく動かせるのです。

ポイントは、介助する側の負担を減らすだけでなく、持ち上げられるご本人の不安や痛みも減らせるところにあります。急に体を持ち上げられるのは、高齢の方にとってこわいものですし、皮膚や関節にも負担がかかることがあります。「抱えない」は、じつはご本人のためでもあるのですね。

じつは在宅のご家族の「腰」こそ守ってほしい

施設では複数のスタッフや大きなリフトで対応できますが、在宅では、ご家族がおひとりで、しかも毎日、何度も移乗を担うことになります。ベッドから車いすへ、車いすからトイレへ、床からの立ち上がり――。わたしが担当させていただいたお客様の中にも、「介護そのものよりも、自分の腰がもたない」とこぼされるご家族が少なくありません。とくに、ご高齢のご夫婦がお互いを支え合う老老介護では、支える側も腰やひざに不安を抱えていることが多いです。

先日うかがったお宅でも、ご家族が『抱え上げる介助』を続けてこられて、腰を痛めかけていました。お話を最後までうかがって、道具の使い方を少しお伝えしただけで、「こんなに違うんですね」とほっとされた表情になられたのが印象に残っています。介護は長く続くものですから、支えるご家族の体を守ることは、在宅生活を続けるための大切な土台だと、現場でいつも感じます。

抱えずに移乗を助けてくれる福祉用具

「大がかりな機械が必要なのでは?」と身構えなくても大丈夫です。ご家庭でも取り入れやすい福祉用具から、順番にご紹介しますね。

まずは介護ベッドの「高さ調整」から

意外に見落とされがちなのですが、ベッドの高さを介助しやすい位置に合わせるだけで、腰の負担はぐっと軽くなります。低すぎるベッドでの介助は、前かがみの姿勢が続いて腰を痛めやすいのです。高さを電動で変えられる介護ベッドなら、乗り移りのときはご本人の足がしっかり床につく高さに、おむつ交換のときは介助者がかがまない高さに、と場面で使い分けられます。

スライディングボード・スライディングシート

これは『抱えない介護』の代表選手のような道具です。

  • スライディングボード:ベッドと車いすの間に渡して、その上を滑らせるように移乗する板です。持ち上げずに横移動でき、うまく使うと少ない力で乗り移れます。
  • スライディングシート:すべりやすい筒状の布で、ベッドの上での位置直しや向き変えをラクにしてくれます。「体がずり下がるたびに引き上げていて腰が…」というご家族に、とくにご相談をいただく品です。

どちらも、正しい使い方を知っているかどうかで効果が大きく変わります。使い方は、わたしたち福祉用具専門相談員が実際に見ながらお伝えできますので、ご遠慮なくお声がけください。

手すり・立ち上がり補助

ご本人がご自分の力で立ち上がれる場合は、抱え上げる代わりに、つかまる場所をつくってあげるのがいちばんです。工事のいらない置き型の手すりを、立ち上がりのポイントに置くだけでも、ご本人の「自分でできる」を引き出せて、結果的に介助する側の負担も減ります。

本格的な負担軽減には移動用リフト

ニュースにあった天井走行リフトは施設向けの大きなものですが、在宅でも使える床走行式・据置式の移動用リフトがあります。寝たきりに近い方の移乗や、支える力がどうしても足りないご家庭では、思いきってリフトを検討する価値があります。介護保険でレンタルできる場合もありますが、どの品目が使えるかは要介護度やお体の状態によって変わります。目安として要介護2以上の方が対象になることが多いのですが、個別の判断が必要ですので、まずはケアマネジャーさんにご相談いただくのが確実です。

千葉市で「抱えない介護」を始めたいとき

「うちの場合はどの道具が合うんだろう」と迷われたら、遠慮なく専門職を頼ってください。千葉市にお住まいであれば、担当のケアマネジャーさんや、お住まいの区の地域包括支援センターが入り口になります。ケアマネージャーさんからもよく相談を受けるのですが、福祉用具は「合うものを、正しい使い方で」使ってこそ効果が出ます。わたしたちは実際にお宅にうかがって、住まいの間取りやご本人の動き、そして支えるご家族の体格や不安まで見ながら、いっしょに選ばせていただきます。

なお、腰や関節にすでに痛みがある場合や、お体の状態に合った介助方法については、自己判断せず主治医やリハビリの専門職にもご相談くださいね。制度の細かい対象範囲は、詳しくはお住まいの自治体の窓口やケアマネさんにご確認いただくと安心です。

『抱えない介護』は、けっして手を抜くことではありません。ご本人にもやさしく、支えるご家族の体も守る、これからの在宅介護の大切な考え方だと思います。ご家族の暮らしが少しでも穏やかになるよう、わたしたちは千葉県で38年お手伝いしてきました。ご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。

参考:ケアニュース by シルバー産業新聞

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