こんにちは、シルバーとっぷの雲居です。
先日、マイナビニュースで、島根県浜田市に住む86歳の女性が、亡くなったご主人が建てた一軒家を「家じまい」するまでを追ったドキュメンタリー番組の記事を読みました。記事によると、女性はご自身の病気をきっかけに、一人息子さんが暮らす東京へ移ることを決めたそうです。「最期までここで過ごしたかった」という言葉に、胸がぎゅっとなりました。
親御さんが遠くで一人暮らしをしていて、体調を崩したのをきっかけに「こっちに呼んだほうがいいのかな」「実家はどうしよう」と悩む40〜60代のご家族は、とても多いと感じています。今回はこのニュースをきっかけに、家じまいや呼び寄せを考えるときに、ご家族で話しておきたいことをお伝えします。
「家じまい」とは? 介護と一緒に考えることが多いテーマです
家じまいとは、親が長く暮らした家を手放したり、片付けたりして、住まいとしての役目を終えることを指す言葉です。記事でも、家に残る家族の思い出の整理や、維持管理・税金の負担、空き家になった後のことなどが、悩みのポイントとして紹介されていました。
現場でよくいただくご質問なのですが、家じまいの相談は、実は介護の始まりとセットになっていることが少なくありません。
- 入院や病気をきっかけに、一人暮らしを続けられるか不安になった
- 子どもが遠方に住んでいて、通うのが大変になってきた
- 家が古く、段差や階段が多くて転びそうで心配
こうしたきっかけで、「家を閉じて子どもの近くに移る」「施設に入る」「今の家で暮らし続ける」という選択肢の間で、ご家族が揺れることが多いです。
決める前に、まず親御さんの気持ちを聞いてみてください
記事の女性のように、家には家族の記憶がたくさん詰まっています。子ども世代から見ると「安全のために早く呼び寄せたい」と思っても、親御さんにとっては、ご近所づきあいや通い慣れたお店、かかりつけの病院など、暮らしそのものを手放すことになります。
わたしは「傾聴」を大切にしているのですが、ご家族のお話を最後まで聞いていると、親御さんが本当に気にしているのは「家」そのものより、「知らない土地で一人になること」だったり、「子どもに迷惑をかけたくない」という気持ちだったりすることがあります。
話し合いのときは、次のような点を一緒に整理してみるのがおすすめです。
- 親御さんが「これだけは大切にしたい」と思っていること
- 今の体の状態で、家の中のどこが一番不便・危ないか
- 近くに頼れる人やサービスがあるか
- 子ども世代が通える頻度や、使える時間
体の状態や今後の見通しについては、自己判断せず、主治医にご相談ください。
「住み慣れた家で暮らし続ける」選択肢も、まず検討を
家じまいを急ぐ前に、福祉用具や介護サービスを使うことで、今の家での暮らしを続けられる場合もあります。介護保険の要介護認定を受けると、要介護度などの条件に応じて、介護ベッド、車椅子、歩行器、工事のいらない手すりやスロープなどを、目安として1〜3割の自己負担でレンタルできます。
わたしが担当させていただいたお客様の中には、遠方のお子さんが「もう一人暮らしは無理かも」と心配されていた方がいらっしゃいました。お宅にうかがってみると、つまずきやすかったのは玄関の上がり框と、夜中にトイレへ向かう廊下でした。ケアマネージャーさんと相談して、玄関に置くタイプの手すりと、ベッドからの立ち上がりを助ける手すりを入れたところ、「これならもう少しこの家で頑張れそう」とご本人の表情が明るくなったのを覚えています。
もちろん、すべてのケースで在宅が続けられるわけではありません。ただ、「今の家に住み続ける」「呼び寄せる」「施設を考える」のどれを選ぶにしても、一度ケアマネージャーさんや地域包括支援センターに相談して、使える支援を知っておくことで、ご家族の判断材料が増えると思います。
千葉に親御さんを呼び寄せる場合に知っておきたいこと
千葉市や近隣にお住まいのご家族が、地方の親御さんを呼び寄せるケースもよくうかがいます。そのときに気をつけたいポイントをまとめました。
介護保険の手続きは転入先の市区町村で
介護保険は、住民票のある市区町村が窓口になります。引っ越すと、転入先で手続きが必要です。条件によっては前の市区町村の認定を引き継げる場合もありますが、届出の期限などの決まりがあります。細かいルールは自治体によって案内が異なることもあるので、詳しくは転入先の区役所・市役所の窓口でご確認ください。
わたしも最初は、引っ越しと介護保険の関係がよく分からず混乱しました。分からないことは窓口や専門家に遠慮なく聞いて大丈夫です。
新しい住まいは「親御さんの体」に合わせて整える
呼び寄せ先がマンションか戸建てか、同居か近居かで、必要な福祉用具は変わります。千葉市内でも、エレベーターのない集合住宅や坂道の多い住宅地、段差の多い古い戸建てなど、住まいの環境はさまざまです。
- 玄関や浴室の段差、手すりの有無
- 寝室からトイレまでの距離と動線
- ベッドを置くスペースと、介助する人が立てる幅
引っ越してから慌てないよう、できれば転居前に福祉用具専門相談員へご相談いただくと、搬入のタイミングなども含めて一緒に段取りを考えられます。
新しい土地での「つながり」もセットで
ベテランの先輩によると、呼び寄せた後に親御さんが元気をなくしてしまう原因として、住み慣れた地域の人間関係から離れてしまうことが多いそうです。デイサービスや地域のサロンなど、外とつながる場所を早めに見つけておくことも大切です。地域包括支援センターでは、こうした地域の情報も教えてもらえます。
実家の片付けや売却は、介護の手配と切り分けて
家じまいでは、家財の整理や不動産の売却、相続のことなど、介護とは別の大きな作業が出てきます。これらを介護の手配と同時に進めると、ご家族の負担がとても大きくなりがちです。
まずは親御さんの安全な暮らしを整えることを優先し、家のことは少し時間をかけて、ご兄弟と役割を分けながら進めるのも一つの方法です。不動産や税金、相続などの判断については、司法書士や税理士などの専門家にご相談ください。
迷ったときは、一人で抱え込まないでください
家を閉じるかどうかは、正解が一つではない選択です。記事の女性も、葛藤を抱えながら決断されたことが伝わってきました。大切なのは、親御さんの気持ちとご家族の暮らしの両方を見ながら、使える支援を知ったうえで選ぶことだと思います。
シルバーとっぷでは、千葉市を中心に、今の家で暮らし続けるための福祉用具選びも、呼び寄せ先の環境づくりも、ご相談をお受けしています。わたしも訪問先で、よく同じご相談をいただきます。一緒に考えていきましょう。
ご家族の暮らしが少しでも穏やかになるよう、わたしたちは千葉県で38年お手伝いしてきました。ご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。
参考:マイナビニュース
