シルバーとっぷで福祉用具専門相談員をしている、雲居 愛です。
10月27日、日本経済新聞に「会社に言えず7年間『隠れ介護』」という記事が載りました。働きながら家族の介護をしている「ワーキングケアラー」の方が、職場で孤立してしまう問題を取り上げたものです。記事では、神奈川県の50歳の方が、職場での扱いが変わるのを心配して、親の介護を7年間会社に伝えなかった例が紹介されていました。また、介護の経験がある人の半数以上で、介護の期間が3年を超えていたとも書かれています。
読んでいて、訪問先でお会いするご家族の顔がたくさん浮かびました。今日は「隠れ介護」を一人で抱え込まないために、知っておいていただきたいことを、福祉用具の相談員の目線でお話しします。
「隠れ介護」とは?なぜ会社に言いにくいのでしょう
「隠れ介護」は、仕事をしながら家族を介護しているのに、そのことを職場に伝えていない状態を指す言葉です。記事でも触れられていましたが、介護はある日突然始まることが多く、いつまで続くかも分かりません。子育てのように「何歳になったら落ち着く」という見通しが立ちにくいのです。
現場でよくいただくご質問なのですが、40〜60代のご家族からは次のような声を聞きます。
- 「職場では責任のある立場なので、介護で休むとは言い出しにくい」
- 「異動や評価に響くのではと心配」
- 「まだそこまで大変ではないから、自分で何とかできるはず」
- 「親の病気や認知症のことを、職場の人に知られたくない」
どれも、もっともなお気持ちだと思います。ただ、一人で抱え続けると、夜中の呼び出しや通院の付き添いが重なって、気づかないうちに心も体も疲れてしまうことがあります。介護が長く続く可能性があるからこそ、早めに「頼れる先」を増やしておくことが大切です。
会社に言う前でも相談できる場所があります
「いきなり会社に話すのはハードルが高い」という方も多いと思います。そんなときは、まず介護の専門窓口に相談するところから始めてみてください。
地域包括支援センター
高齢者の暮らしの総合相談窓口で、相談は無料です。千葉市では各区に設置されていて、「親の様子が少し心配」という段階でも相談できます。介護保険の申請のこと、使えるサービスのことなどを一緒に整理してもらえます。
ケアマネージャーさん
すでに要介護認定を受けている場合は、担当のケアマネージャーさんに「平日の日中は仕事で家にいません」「急な呼び出しが一番つらいです」と、働き方をそのまま伝えてみてください。ケアマネージャーさんからもよく相談を受けるのですが、ご家族の勤務状況が分かると、デイサービスの時間帯や訪問の組み方を考えやすくなるそうです。
勤務先の制度
介護休業や介護休暇など、仕事と介護の両立を支える制度もあります。ただ、使える日数や条件は法律の決まりと会社ごとの規定の両方で変わるので、ここで断言はできません。詳しくは勤務先の人事担当の方や、労働局などの窓口・専門家にご確認ください。制度の話はややこしいですよね。わたしも最初は混乱しました。
福祉用具は「家族がいない時間」を支える道具でもあります
福祉用具というと「介護する人が楽になる道具」と思われがちですが、実はご家族が仕事に出ている時間に、親御さんが一人で安全に過ごすための道具でもあります。働くご家族のご相談でよく話題になるものを挙げますね。
- 手すり(工事不要タイプ):ベッドからの立ち上がりやトイレへの移動など、日中一人で動く場面を支えます。賃貸住宅でも置けるタイプがあります。
- 介護ベッド:高さや背もたれを調整できるので、起き上がりや立ち上がりがしやすくなることが多いです。朝の身支度にかかる時間が短くなったという声もあります。
- ポータブルトイレ:夜間のトイレ移動が心配な方に。ご家族が夜中に何度も起きる負担が軽くなる場合があります。
- 歩行器:家の中や近所への外出を、ご本人のペースで続けやすくなります。
- 認知症老人徘徊感知機器:玄関やベッドまわりの動きをお知らせする機器です。対象になるかどうかは要介護度などの条件があるので、ケアマネージャーさんにご確認ください。
介護保険で福祉用具をレンタルする場合、自己負担はだいたい1〜3割です。月々の費用は品目によって変わりますが、目安として数百円〜千円台のものも多くあります。どの用具が合うかは、お体の状態やお住まいによって違うので、主治医やケアマネージャーさんと相談しながら決めていきましょう。
現場で感じた「早めに相談」の大切さ
わたしが担当させていただいたお客様の中には、会社勤めの息子さんがお母さまの介護を一人で担っているご家庭がありました。はじめてお会いしたとき、息子さんは「仕事の合間に様子を見に帰っているけれど、転んでいないか心配で仕事に集中できない」とお話しされていました。
ケアマネージャーさんと相談して、ベッドの横と廊下に置くタイプの手すりを入れ、デイサービスの日を増やしたところ、しばらくしてから「昼休みに家に帰る回数が減って、少し気持ちに余裕ができました」と教えてくださいました。もちろん、どのご家庭でも同じようにいくわけではありません。それでも、相談先と道具を少しずつ増やすだけで、ご家族の肩の荷が軽くなることは多いと感じています。
平日に時間が取れないご家族へ
「相談したくても、平日は仕事で時間がない」というお悩みもよく聞きます。福祉用具の相談では、次のような工夫をされているご家族もいらっしゃいます。
- 最初の訪問日を、休みの日や仕事終わりに合わせられないか相談する
- 電話やメールで、事前にお困りごとをまとめて伝えておく
- ご兄弟やご親戚と、立ち会いを交代で分担する
- 親御さんの様子をスマートフォンで撮って、相談のときに見せる
対応できる時間帯は事業所ごとに違いますので、遠慮せずに聞いてみてください。千葉市内でも、通勤に時間がかかるご家族は少なくありません。「こんな時間でもいいですか?」と言っていただければ、できる範囲で一緒に方法を考えます。
まとめ:介護は「一人で抱えない」形に変えていけます
介護を会社に言うかどうかは、ご家族それぞれの事情があると思います。無理に話す必要はありません。ただ、職場に言えない時期でも、地域包括支援センターやケアマネージャーさん、そしてわたしたち福祉用具専門相談員には、遠慮なく頼っていただきたいです。介護が長く続くかもしれないからこそ、最初から「頼る先」を作っておくことが、ご家族の仕事と暮らしを守ることにつながります。
わたしも訪問先で、よく同じご相談をいただきます。一緒に考えていきましょう。ご家族の暮らしが少しでも穏やかになるよう、わたしたちは千葉県で38年お手伝いしてきました。ご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。
雲居 愛(くもい あい)/ 株式会社シルバーとっぷ 在宅営業部 福祉用具専門相談員。千葉県生まれ。千葉県内の大学で社会福祉を学び、2024年シルバーとっぷ入社。現在は千葉市を中心にご家族のもとへ訪問し、福祉用具の選定やご相談を担当。趣味は読書と犬の散歩。
参考:日本経済新聞
