車いす送迎事故で死亡30件、JIS制定へ|家族が確かめたい固定とベルト

こんにちは、シルバーとっぷの雲居です。

9月も後半になり、千葉市内でもようやく朝晩が過ごしやすくなってきました。気候が落ち着くと、通院やデイサービス以外にも「久しぶりに親を連れて出かけたい」「秋のうちにお墓参りに行きたい」というお話をよく聞くようになります。そんな時期に、ご家族にぜひ知っておいていただきたいニュースがありました。

車いすでの送迎中の事故、7年間で死亡30件と報道

シルバー産業新聞のニュースサイト「ケアニュース」で、車椅子に乗ったまま自動車で移動している最中の事故についての記事が公開されました。記事では、消費者庁の消費者安全調査委員会(消費者事故調)が公表した経過報告の内容が紹介されています。

  • 2019年1月〜2025年12月の7年間に確認された送迎中の事故は49件、そのうち30件が死亡事故
  • 介護サービスの送迎中の事故は34件で、そのうち24件が死亡事故
  • 原因として、車椅子の固定不備が8件、シートベルトの未装着が9件(事実関係が分からないものが17件)
  • 急ブレーキのときにシートベルトをしていなくてずり落ちた例や、固定が不十分で車椅子ごと倒れた例が報告されている

専門家からは、時速40〜50km程度の事故でも命に関わるおそれがある、との指摘もあったそうです。一般道でふつうに出すくらいのスピードですよね。わたしも読みながら、背筋が伸びる思いがしました。

2027年3月に「車内で固定する車椅子」のJIS公布の見込み

記事によると、対策として新しいJIS(日本産業規格)の開発が進められています。仮の名前は「4点フック又はアンカーバーによって使用状態で自動車内に固定される車椅子」で、2027年3月に公布される見込みとのことです。

かみ砕くと、「人が乗ったまま車内に固定して使う車椅子」のための国の規格ができる、ということです。福祉車両では、車椅子のフレームの4か所をフックとベルトで車の床につなぎとめたり、専用のバー(アンカーバー)で固定したりする方法がよく使われます。こうした使い方を前提にした車椅子について、基準をそろえようとする動きだと理解しています。

あわせて、2026年3月には民間資格「福祉送迎士」も始まったと紹介されています。送迎する人の知識や技術を高めるための取り組みです。

規格の具体的な中身や、今お使いの車椅子がどう扱われるのかは、公布後に明らかになっていく部分です。今の時点で「この車椅子はもう使えない」ということではないので、あわてなくて大丈夫です。わたしも新しい情報が出たら、先輩と一緒にしっかり確認していきます。

ご家族が送迎するときに確かめたい3つのこと

今回の事故の数字には介護サービスの送迎が多く含まれていますが、ご家族が福祉車両で親御さんを乗せる場面でも、気をつけるポイントは同じです。先輩から教わったことも含めて、ご家族目線でまとめます。

1. 車椅子は「前後の4か所」でしっかり固定されているか

福祉車両の固定ベルトは、フレームの決められた場所にかけることが大切です。タイヤやひじ掛け、取り外しのできる部品にかけてしまうと、急ブレーキのときに外れたり、ずれたりすることがあります。車の取扱説明書に、フックをかける場所が図で載っていることが多いので、一度ご家族で見てみてください。ブレーキをかけているかどうかも、忘れずに確かめましょう。

2. シートベルトは「車の」ベルトを締めているか

車椅子に付いている腰ベルト(姿勢を保つためのベルト)は、事故のときに体を守るためのものではない場合がほとんどです。車の座席と同じように、車に付いている肩と腰のシートベルトを締めることが基本です。ベルトが首にかかっていないか、お腹ではなく骨盤のあたりを通っているかも見てあげてください。

3. その車椅子は「乗ったまま車に載せる」使い方に合っているか

現場でよくいただくご質問なのですが、「今レンタルしている車椅子のまま、福祉車両に乗せてもいいですか?」と聞かれることがあります。車椅子によっては、人が乗ったまま車内で固定することを想定していないものもあります。車椅子の説明書や、車両のメーカー・販売店の案内を確かめていただくのが安心です。ご不安なときは、わたしたち福祉用具専門相談員にもご相談ください。

乗ったままがいいのか、座席に移るのがいいのか

ご家族からは「車の座席に移るのと、車椅子のまま乗るのと、どっちが安全ですか?」というご質問もいただきます。これは親御さんの体の状態や、座る姿勢をどれくらい保てるかによって答えが変わるので、一概には言えません。移りやすさや長時間座っていられるかどうかは、主治医やリハビリの専門職、ケアマネさんにご相談ください。

先日、お客様のお宅にうかがった時のことです。息子さんが「月に一度の通院は自分の車で連れて行きたい」とおっしゃっていて、車椅子のたたみ方や、車の座席への移り方を一緒に練習しました。回転する座席や、移るときにお尻をすべらせやすくする道具を組み合わせると、ご本人もご家族もずいぶん楽になったと喜んでくださいました。「乗ったまま」だけが答えではないので、暮らし方に合わせて一緒に考えていけたらと思います。

通所サービスの送迎で、ご家族ができること

デイサービスなどの送迎は、事業所のスタッフさんが担当してくださいます。ご家族が全部をチェックするのはむずかしいですが、次のようなことを伝えておくと安心につながります。

  • 車椅子を新しいものに替えたとき、サイズや部品が変わったことを事業所に伝える
  • 体が傾きやすい、ずり落ちやすいなど、最近の座り方の変化を共有する
  • 送迎時の固定やシートベルトについて、気になることがあれば遠慮せず聞いてみる

ケアマネージャーさんからもよく相談を受けるのですが、車椅子を替えたことが送迎の担当者さんまで伝わっていないこともあるようです。サービス担当者会議などの場で、ひと言添えていただけるとうれしいです。

車椅子が体に合っていることも、安全につながります

ずり落ちの原因には、シートベルトだけでなく、車椅子そのものが体に合っていないこともあると言われています。座面の奥行きが合っていなかったり、クッションがへたっていたりすると、ふだんから前にずれやすくなることがあります。

介護保険で車椅子をレンタルしている場合は、体の状態が変わったときに機種を替えたり、クッションを見直したりしやすいのも良いところです。費用はお住まいの市区町村の設定や負担割合によって変わりますが、目安として、自己負担はだいたい月に数百円から、というケースが多いです。詳しくはケアマネさんや福祉用具の事業所に確認してみてください。

制度や規格の話はむずかしく感じますよね。わたしも最初は混乱しました。でも、「固定する場所」「車のシートベルト」「車椅子の使い方」の3つを押さえておくだけでも、いつもの送迎がぐっと安心になると思います。JISの細かい内容や、ほかの法令との関係は、今後の公表を待って、詳しくは専門家や関係機関にご確認ください。

まとめ

  • 車椅子に乗ったままの送迎中の事故は、7年間で49件、そのうち30件が死亡事故と報道された
  • 2027年3月に、車内で固定して使う車椅子のJISが公布される見込み
  • ご家族が確かめたいのは「フレームでの4点固定」「車のシートベルト」「その車椅子が車内での使用に合っているか」
  • 乗ったまま移動するか座席に移るかは、体の状態に合わせて主治医やケアマネさんと相談を

秋のお出かけや通院が、親御さんにとってもご家族にとっても安心な時間になりますように。ご家族の暮らしが少しでも穏やかになるよう、わたしたちは千葉県で38年お手伝いしてきました。ご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。

雲居 愛(くもい あい)/ 株式会社シルバーとっぷ 在宅営業部 福祉用具専門相談員。千葉県生まれ。千葉県内の大学で社会福祉を学び、2024年シルバーとっぷ入社。現在は千葉市を中心にご家族のもとへ訪問し、福祉用具の選定やご相談を担当。趣味は読書と犬の散歩。

参考:ケアニュース by シルバー産業新聞

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