こんにちは、シルバーとっぷの雲居です。
敬老の日に合わせて、製品評価技術基盤機構(NITE)が高齢者の電動車いすと介護ベッドの事故について発表しました。このニュースを読んで、わたしは思わず手が止まりました。どちらも、わたしたちが毎日のようにお届けしている福祉用具だからです。
「うちの親も電動車いすで買い物に行っている」「介護ベッドを使い始めたばかり」というご家族にとっても、他人事ではないニュースだと思います。今日はこのニュースをきっかけに、ご家族が一緒に確かめておきたいポイントを、現場の目線でお話しします。
ニュースの概要:10年間の事故報告のうち、およそ半数が死亡事故
報道によると、NITEが2016〜2025年の10年間を調べたところ、高齢者の電動車いすと介護ベッドに関する事故報告は合計102件ありました。そのうちおよそ半数が、亡くなる事故だったとされています。
- 電動車いす:59件の報告のうち34件が死亡事故。主な内容は「側溝や川などへの転落」が26件、「踏切で電車と接触」が13件
- 介護ベッド:43件の報告のうち23件が死亡事故。主な内容は「隙間に挟まる」が23件、「ベッドの一部が落下」が5件、「火災」が5件
NITEは、誤った使い方や不注意が疑われるケースがほとんどだとしています。そのうえで「気を付ければ防げた事故がある」と注意を呼びかけています。
「防げた」という言葉は重いですよね。でも裏を返せば、ご家族と、わたしたち福祉用具専門相談員が一緒に気を付けることで、防げる事故があるということでもあります。
電動車いすの事故を防ぐために確かめたいこと
1. いつも通る道を「電動車いすの目線」で見直す
報道では、電動車いすの事故の多くが側溝や川への転落、踏切での接触でした。千葉県内にも、田んぼや畑のわきを流れる用水路、ふたのない側溝、住宅地を通る踏切がたくさんあります。歩くときは気にならない道でも、電動車いすだと危ない場面があります。
- 道幅が狭く、路肩が側溝や水路に向かって傾いていないか
- ふたのない側溝や、草で見えにくくなった水路のふちがないか
- 踏切の中に、線路の溝や段差、でこぼこがないか
- 夕方や雨の日に見えにくくなる場所がないか
先日、お客様のお宅にうかがった時のことです。電動車いすの利用を始めたご本人と、ご家族と一緒に、よく使うスーパーまでの道を歩いてみました。すると、歩道が途中で細くなり、すぐ横に水路が続く場所がありました。ご家族は「毎日通っている道なのに、全然気づかなかった」とおっしゃっていました。少し遠回りでも、道幅が広い道を「いつものルート」に決めていただき、ご本人も「ここは通らないようにするね」と安心されたようです。
もし踏切を渡らないと行けない場所がある場合は、踏切のない道がないか、一緒に地図で探してみるのもおすすめです。
2. バッテリーの残量と、日ごろの点検
途中でバッテリーが少なくなると、あわてて近道を選んでしまったり、踏切の途中で止まってしまったりしないか心配です。出かける前に残量を確かめることを、ご本人の習慣にしていただけると安心です。「充電は寝る前に」など、生活の流れに組み込むと忘れにくいことが多いです。
タイヤの空気、ブレーキの効き、ガタつきなども、使っているうちに少しずつ変わっていきます。「最近なんだか音がする」「曲がりにくい」と感じたら、そのままにせずご相談ください。
3. ご本人の体調や判断力の変化にも目を向ける
電動車いすは、ご本人の「行きたいところへ行ける」を支えてくれる、とても大切な道具です。一方で、見え方や反応の速さ、疲れやすさは、年齢や体調で少しずつ変わっていくことがあります。
「以前より操作がぎこちない」「ぶつかりそうになった話を聞いた」など、ご家族が気づいたちょっとした変化は、ぜひケアマネージャーさんや、わたしたち相談員に教えてください。運転してよいかどうかといった体の状態の判断が必要なときは、主治医にご相談いただくのがいちばん確実です。
介護ベッドの事故を防ぐために確かめたいこと
1. 「隙間」をチェックする
介護ベッドの事故で最も多かったのは「隙間に挟まる」でした。サイドレール(ベッドの柵)同士の間、柵とヘッドボードの間、柵そのものの中などに、腕や首、頭が入り込んでしまう危険があります。
先輩から教わったのですが、隙間はカバーやクッションでふさげることが多いそうです。また、安全面に配慮した構造の製品もあります。寝返りが多い方や、認知症で体の位置が分かりにくくなっている方は、特に気を付けたいところです。
2. 電動で動かす前に「手足の位置」を見る
背上げや高さ調整をするときは、動かす前に、ご本人の手足が柵の間やベッドの下に入っていないか確かめましょう。ベッドの下にご家族の足や、ペットが入り込んでいないかも大事なポイントです。訪問先でかわいい猫ちゃんに出会うと、わたしはつい和んでしまうのですが、ベッドの下が好きな子も多いので、動かす前にひと声かけていただけると安心です。
3. 電源まわりと古いベッド
火災の報告もありました。コンセントのほこり、コードが家具の下敷きになっていないか、タコ足配線になっていないかなども、ときどき見ていただけると安心です。また、ご親戚から譲り受けた古いベッドや、長く使っているご自宅のベッドを使っている場合は、柵の隙間や部品のゆるみを一度確認してみることをおすすめします。
「隙間」「部品」「電源」と、確かめることが多くて大変に感じるかもしれません。わたしも入社したばかりのころは、チェックすることの多さに混乱しました。でも、一度覚えてしまえば、数分で見られることがほとんどです。
レンタルなら「一緒に確かめる人」がいます
介護保険で福祉用具をレンタルしている場合、わたしたち福祉用具専門相談員が、定期的にご自宅をうかがって使い方や状態を確認します(モニタリングといいます)。そのときに、ご家族が気になっていることを遠慮なく聞いてください。
- ご本人の体の状態が変わったので、柵やベッドの種類を見直したい
- 電動車いすの操作に少し不安が出てきた
- 隙間をふさぐカバーを付けたい
- 外出ルートの危ない場所について相談したい
ケアマネージャーさんからもよく相談を受けるのですが、「こんなことを聞いていいのかな」という小さな気づきが、事故を防ぐきっかけになることもあります。福祉用具の交換や追加が必要な場合は、ケアマネージャーさんとも連携しながら進めていきます。
今日からできる、ご家族のチェックリスト
- 電動車いすでよく行く場所までのルートを、一度一緒に歩いてみる
- ルート上の側溝・水路・踏切の場所を確かめ、避けられる道を探す
- 出かける前にバッテリー残量を確かめる習慣をつくる
- 介護ベッドの柵まわりの隙間を見て、気になる場所はご相談する
- ベッドを動かす前に、手足やベッドの下を確かめる
- コンセントやコードのまわりを、ときどき掃除・確認する
帰省したときや、週末にご実家へ行ったときなど、目安として月に1回くらい見ていただくだけでも違うと思います。
おわりに
電動車いすも介護ベッドも、ご本人らしい暮らしを支えてくれる大切な道具です。「危ないから使わない」ではなく、「安全に使い続けるにはどうしたらいいか」を、ご家族と一緒に考えていけたらうれしいです。
わたしも訪問先で、よく同じご相談をいただきます。一緒に考えていきましょう。ご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。
参考:東京新聞デジタル
