認知症の親の行方不明に備える|家族の全国組織設立から考える在宅の工夫

こんにちは、シルバーとっぷの雲居です。朝晩が少しずつ涼しくなり、千葉市内でもお散歩をする方を多く見かけるようになりました。気候が良くなって外に出る機会が増えるのは、とても良いことです。その一方で、認知症のあるご家族と暮らしている方からは「ひとりで出かけて、帰ってこられなくなったらどうしよう」というご不安の声をうかがうことがあります。

そんな中、認知症で行方不明になった方のご家族や支援者が全国組織を立ち上げるというニュースが報じられました。今日はこのニュースをきっかけに、ご家族が「ひとりで抱え込まない」ための備えについて、福祉用具専門相談員の目線でお話しします。

認知症の行方不明をなくすための全国組織が設立へ

2026年9月19日の東京新聞デジタル(共同通信配信)の記事によると、認知症で行方不明になった方のご家族や支援者が「認知症行方不明者と家族・支援者全国連絡会」という全国組織を立ち上げるそうです。12月に東京都内で設立会を開き、本格的に活動を始める予定とのことです。

記事で紹介されている主なポイントは次のとおりです。

  • ご本人・ご家族・支援者が相談できる場をつくる
  • 当事者が抱える問題を整理し、解決に向けて取り組む
  • 各都道府県に支部がある「認知症の人と家族の会」(京都市)と協力し、全国に活動を広げる
  • 認知症の方とご家族が、安心して外出できる社会を目指す

これまで一部の地域で活動する団体はあったものの、行方不明の問題に特化した全国組織はなかったそうです。具体的な活動はこれから形になっていくと思われますので、今後の情報にも注目したいと思います。

「外に出さない」ではなく「安心して出かけられる」へ

このニュースでわたしの印象に残ったのは、目標が「外出させないこと」ではなく「安心して外出できる社会」とされている点です。

現場でよくいただくご質問なのですが、「鍵を増やして、外に出られないようにしたほうがいいですか?」と聞かれることがあります。ご心配なお気持ちはとてもよく分かります。ただ、ベテランの先輩によると、ご本人が外に出ようとするときには「買い物に行きたい」「職場に行かなきゃ」など、その方なりの理由があることが多いそうです。無理に閉じ込めようとすると、かえって落ち着かなくなってしまう場合もあります。

もちろん、安全を守ることは大切です。そのうえで「出かけたい気持ち」を大事にしながら、万が一のときにすぐ気づける仕組み、見つけてもらえる仕組みをつくっておく。そう考えるだけでも、ご家族の気持ちが少し軽くなるのではないかと思います。

ご家族だけで抱え込まないことが第一歩

認知症のある方が一度でも行方不明になりかけると、ご家族は「わたしがちゃんと見ていなかったから」とご自分を責めてしまうことが少なくありません。働きながら親御さんを支えている40〜60代の方なら、なおさら24時間見守り続けるのは現実的ではありませんよね。

今回の全国組織が「相談できる場」を大切にしているのは、こうしたご家族の孤立を防ぐためだと感じました。千葉県内にお住まいの方も、次のような相談先を頼ることができます。

  • 地域包括支援センター:高齢者の暮らしの総合相談窓口です。認知症への不安や見守りについても相談できます。
  • 担当のケアマネジャーさん:すでに介護保険のサービスを使っている方は、まずケアマネさんに状況を伝えてみてください。
  • お住まいの市町村の高齢者支援の窓口:行方不明に備えた事前登録や、見守りネットワークの仕組みを設けている自治体もあります。内容は地域ごとに異なるので、窓口で確認してみてください。
  • 家族会:記事で紹介されていた「認知症の人と家族の会」は各都道府県に支部があるとのことです。同じ立場のご家族と話せる場として利用されている方もいます。

相談先がたくさんあって、どこに声をかければいいのか迷ってしまいますよね。わたしも最初は混乱しました。迷ったときは、まず地域包括支援センターかケアマネさんに相談するのがおすすめです。

福祉用具でできる「気づく」ための備え

福祉用具専門相談員としてご家族にお伝えしたいのは、「気づく仕組み」をつくっておくことです。介護保険の福祉用具貸与(レンタル)には「認知症老人徘徊感知機器」という品目があります。ご本人がベッドから離れたときや玄関を通ったときに、ご家族へ知らせてくれる機器です。

主なタイプの例

  • ベッドや布団のそばに置くマットタイプ:床に足を下ろしたときに知らせてくれるので、夜中に起き上がったことに気づきやすくなります。
  • 玄関やドアに設置するセンサータイプ:人が通ったことを感知して、別の部屋にいるご家族に知らせます。
  • ベッドに取り付ける離床センサータイプ:ベッドから離れる動きを感知します。

なお、認知症老人徘徊感知機器の対象は原則として要介護2以上の方です。要支援・要介護1の方でも、状態によっては例外的に利用できる場合がありますが、そのための手続きが必要です。対象になるかどうかは、ケアマネさんにご相談ください。料金は機種によって異なりますが、目安として自己負担1割の方なら月数百円程度から借りられるものが多いです。

用具だけに頼らない工夫も

先輩から教わったのですが、センサーを置くときは「鳴ったあとにどう動くか」まで決めておくことが大切だそうです。たとえば、次のような準備をしておくと安心です。

  • ご本人の最近の写真(全身が写っているもの)をスマートフォンに保存しておく
  • よく着ている服や靴の特徴をメモしておく
  • 衣類や持ち物に連絡先を記しておく(何をどこまで書くかはご家族で相談を)
  • ご近所の方や、よく行くお店の方に、さりげなく事情を伝えておく
  • 行方が分からなくなったら、ためらわずに警察へ相談する

現場で感じる「ご家族の安心」

わたしが担当させていただいたお客様の中に、夕方になると「家に帰らなきゃ」と玄関に向かうお母さまと暮らしている娘さんがいらっしゃいました。最初は「ずっと玄関を見張っていて、夕飯の支度もできない」と、とてもお疲れのご様子でした。

ケアマネさんと相談して玄関にセンサーを置き、あわせてデイサービスに通う日も見直しました。すると娘さんは「鳴ったら様子を見に行けばいい、と思えるだけで気持ちがずいぶん楽になりました」と話してくださいました。用具ひとつですべてが解決するわけではありません。それでも、ご家族が「ずっと気を張っていなくていい」と思える時間をつくることも、福祉用具の大切な役割だと感じています。

ご本人の状態や住まいの環境によって、合う機器や置き場所はそれぞれ違います。認知症の症状や体調の変化で気になることがあるときは、主治医にご相談ください。

まとめ:つながることが、いちばんの備えです

今回のニュースは、認知症の方の行方不明をご家族だけの問題にしないための動きだと感じました。

  • 「外に出さない」よりも「安心して出かけられる」仕組みを考える
  • 地域包括支援センター、ケアマネさん、家族会など、相談先を持っておく
  • 徘徊感知機器などの福祉用具で「気づく」仕組みをつくる
  • いざというときのための情報(写真・服装・連絡先)を準備しておく

全国組織の具体的な活動や、自治体ごとの見守りの取り組みについては、今後の発表やお住まいの市町村の窓口で最新の情報をご確認ください。

わたしも訪問先で、よく同じご相談をいただきます。一緒に考えていきましょう。ご家族の暮らしが少しでも穏やかになるよう、わたしたちは千葉県で38年お手伝いしてきました。ご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。

参考:東京新聞デジタル

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