こんにちは、シルバーとっぷの雲居です。先日、お客様のお宅にうかがった時のことです。ご家族の方から「病院を受診するたびに、母の介護の状況を最初から説明し直しているんです」と、少し疲れたご様子でお話しいただきました。わたしも訪問先で、よく同じご相談をいただきます。
そんな「情報がバラバラ問題」に関わるニュースが、2026年9月21日に介護ニュースJointで報じられていました。見出しは「介護情報基盤、全国の約9割の市町村で来年度までに始動 2028年度から全国運用へ」。少し硬い言葉が並びますが、親の介護が始まったばかりのご家族にとっては、これから数年かけてじわじわ効いてくるお話だと感じています。今日はこのニュースを入口に、ご家族目線で噛み砕いてみたいと思います。
ニュースの内容を、やさしく整理します
「介護情報基盤」とは何でしょう
記事によると、介護情報基盤とは、介護保険証や要介護認定、主治医意見書、ケアプラン、LIFEデータといった現場で必要な情報を、利用者・事業所・医療機関・市町村などの関係者がオンラインで安全に閲覧・共有できる新たなインフラ、とされています。
言葉が硬いので、わたしなりに言い換えてみますね。これまで紙やファックス、電話でやりとりしていた「その方の介護に関する基本的な情報」を、関わる人たちが同じ画面で見られるようにしていく仕組み、というイメージです。正直に申し上げると、わたしも最初にこの言葉を聞いたときは「基盤……?」と、まったく頭に入ってきませんでした。同じように感じた方も多いのではないかと思います。
いつから始まるのでしょう
記事に書かれていたスケジュールを整理すると、次のような内容でした。
- 2026年7月10日時点で、1545市町村(全体の88.7%)が本格運用の開始を決定している
- そのうち今年度中に416市町村、来年度中に1129市町村で運用が始まる予定
- 残る196市町村は調整中で、厚生労働省が2028年4月に間に合うよう対応を呼びかけている
- 2028年4月までに、全国すべての市町村での運用開始を目指している
また、各市町村の具体的な運用開始日程は「介護情報基盤ポータル」で確認できる、とも書かれていました。つまり、お住まいの市町村がいつから始まるのかは、地域によって違うということですね。ご自身の地域の状況や、実際にどこまでの情報が対象になるのかといった細かい点については、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターにご確認いただくのが確実です。制度の解釈にあたる部分は、わたしのような相談員が断定してよい範囲を超えてしまいますので、必ず公的な窓口でご確認くださいね。
ご家族にとって、何が変わりそうでしょうか
ここから先は、これから実際に運用されていく中で固まっていく部分も多いので、断定は避けたいと思います。ただ、日々ご家庭を訪問していて「ここが少し楽になるかもしれないな」と感じる点をいくつか挙げてみます。
同じ説明を、何度もしなくてよくなるかもしれません
在宅介護が始まると、ご家族は本当にたくさんの人と関わることになります。ケアマネージャーさん、訪問看護師さん、ヘルパーさん、デイサービスの職員、そしてわたしたち福祉用具の担当者。さらに主治医の先生や病院のソーシャルワーカーさんも加わります。そのたびに「要介護度は」「いつ倒れて」「今どんな薬を」と説明を繰り返すのは、想像以上に消耗する作業です。関係者が同じ情報を見られるようになれば、この負担が少しずつ軽くなっていくことが期待されます。
入院・退院のときの引き継ぎがスムーズになるかもしれません
現場で一番ヒヤッとするのが、退院のタイミングです。「来週退院します」とご連絡をいただいてから、ご自宅の環境を確認し、介護ベッドや手すりを手配する——という流れになることも珍しくありません。関係者の間で状況が早く共有されるようになれば、こうした駆け込みの場面が減っていくのではないかと、個人的には期待しています。
遠方に住むご家族にも関係するお話です
千葉のご実家に親御さんがお一人で、ご家族は都内や他県にお住まい——というケースは、本当に多くいただきます。離れて暮らしていると、親御さんの介護が今どうなっているのかが見えにくいものです。オンラインで情報を共有できる仕組みが広がることは、遠距離介護をされているご家族にとっても、心強い方向の変化だと思います。
現場で感じる「情報が届かない」もどかしさ
わたしが担当させていただいたお客様の中には、退院のご連絡をいただいてお宅にうかがったら、聞いていた身体の状況と実際がかなり違っていた、ということがありました。ご家族も「病院ではそこまで詳しく聞けなくて」とおっしゃっていて、誰が悪いという話ではないのですが、結果的に用具の選び直しが必要になってしまいました。
先輩から教わったのですが、こういう「情報の段差」で一番負担を背負うのは、いつもご家族なのだそうです。だからこそ、関係者が同じ情報を見られる仕組みづくりが進むことには、現場としても前向きな気持ちでいます。もちろん、仕組みができたからといって、すぐに現場のすべてが変わるわけではありません。実際に動き出すまでには、まだ時間がかかりそうです。
基盤が広がるまでの間、ご家族が今できる3つの備え
ニュースを読んで「じゃあ待っていればいいのかな」と思われたかもしれませんが、お住まいの市町村での運用開始は来年度以降という方も多いはずです。その間にできる、地味だけれど効く備えを3つご紹介します。
1. 介護保険証と負担割合証の「置き場所」を家族で共有する
意外と多いのが「いざという時にどこにあるか分からない」というご相談です。介護保険被保険者証と介護保険負担割合証は、サービスを始めるときにも更新のときにも必要になります。親御さんと一緒に、封筒にまとめて決まった引き出しに入れておく、という程度で構いません。写真を撮ってご家族のグループに共有しておく方もいらっしゃいます。
2. ケアプランと利用中のサービスを一枚にまとめておく
ケアマネージャーさんからお渡しされるケアプラン(居宅サービス計画書)は、その方の介護の設計図のようなものです。目安として月に1回はお手元に届く書類ですので、最新のものをすぐ出せるようにしておくと、急な入院や相談のときに役立ちます。レンタル中の福祉用具の品名も、一緒にメモしておくと安心です。
3. ケアマネージャーさんの連絡先を、家族全員が知っておく
キーパーソンになっているお一人だけが連絡先を知っている、という状態は少し心配です。ご兄弟姉妹の間でも共有しておくと、いざという時に動ける人が増えます。ケアマネージャーさんからもよく相談を受けるのですが、「ご家族のどなたに連絡してよいか分からない」という場面は現場でも起こりがちなのだそうです。
福祉用具の情報も、実は「共有」がとても大事です
わたしたち福祉用具専門相談員も、ケアマネージャーさんや医療職の方々と情報をやりとりしながら用具を選んでいます。同じ「歩行器」でも、屋内で使うのか屋外まで出るのか、ご本人の握力はどうか、玄関に何段の段差があるかで、おすすめする種類はまったく変わってきます。
だからこそ、ご家族から教えていただく「最近、夜中にトイレへ行く回数が増えた」「壁に手をついて歩くようになった」といった日常の変化が、何よりの情報になります。カルテには載らない情報は、やはりご家族が一番よくご存じです。仕組みが整っていく中でも、この部分はきっと変わらないと思っています。
なお、お体の状態やお薬に関するご心配は、必ず主治医の先生にご相談ください。わたしたちがお手伝いできるのは、その上での用具選びと環境づくりの部分です。
千葉市・千葉県にお住まいのみなさんへ
千葉県内も市町村によって介護の体制はさまざまです。千葉市内であれば、まずはお住まいの区の地域包括支援センターが入口になります。介護情報基盤の開始時期など制度そのもののご質問は、区役所の介護保険担当窓口にお問い合わせいただくのが確実です。
「うちの親、そろそろ何か用意したほうがいいのかしら」という段階のご相談でも、まったく問題ありません。ベッドの高さひとつ、手すり一本で、ご本人の動きとご家族の気持ちがぐっと楽になることを、現場で何度も見てきました。
まとめ
- 介護情報基盤は、介護保険証・要介護認定・主治医意見書・ケアプランなどをオンラインで共有する新しい仕組み
- 2026年7月10日時点で1545市町村(88.7%)が本格運用の開始を決定、2028年4月までの全国運用を目指している
- お住まいの市町村の開始時期は地域によって異なるため、自治体の窓口でのご確認を
- 今できる備えは、保険証の置き場所の共有・ケアプランの整理・ケアマネさんの連絡先の共有
制度の話は少しややこしく感じるかもしれませんが、根っこにあるのは「ご本人とご家族が、同じ説明を何度もしなくて済むように」というシンプルな願いなのだと思います。ご家族の暮らしが少しでも穏やかになるよう、わたしたちは千葉県で38年お手伝いしてきました。ご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。
雲居 愛(くもい あい)/ 株式会社シルバーとっぷ 在宅営業部 福祉用具専門相談員。千葉県生まれ。千葉県内の大学で社会福祉を学び、2024年シルバーとっぷ入社。現在は千葉市を中心にご家族のもとへ訪問し、福祉用具の選定やご相談を担当。趣味は読書と犬の散歩。
参考:介護ニュースJoint
